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線状降水帯が降らせた豪雨と、土石流・がけ崩れの発生

時事と防災

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線状降水帯が降らせた豪雨と、土石流・がけ崩れの発生

線状降水帯発生時の降雨量と平均比較

2021年7月1日から3日にかけて、神奈川・静岡両県で、線状降水帯による豪雨が発生しました。

3日間の雨量は(以下、表中データは全て気象庁HP内”過去の気象データ“参照)、

エリア 3日間の雨量 7月月平均雨量
横浜 1日78.0ミリ、2日109.5ミリ、3日125.0ミリ 182.5ミリ
平塚 1日68.5ミリ、2日105.5ミリ、3日169.5ミリ 167.1ミリ
箱根 1日128.0ミリ、2日384.5ミリ、3日290.5ミリ 425.3ミリ
網代(熱海市) 1日110.5ミリ、2日161.0ミリ、3日140.0ミリ 242.5ミリ
三島 1日98.0ミリ、2日178.5ミリ、3日147.0ミリ 223.4ミリ

を記録しています。

上記の5地点に限ったとしても、全て最初の2日間の雨量だけで月平均雨量を超えているという異常な降り方をしているのですが、この豪雨は、神奈川・静岡エリアにかけて発生した線状降水帯がもたらしたものです。

線状降水帯とは「次々と発生する発達した雨雲(積乱雲)が列をなした、組織化した積乱雲群によって、数時間にわたってほぼ同じ場所を通過または停滞することで作り出される、線状に伸びる長さ50~300km程度、幅20~50km程度の強い降水をともなう雨域」のことだと定義されています(参考 気象庁HP “顕著な大雨に関する情報“)。

天気予報で出てくる天気図などで見ると分かりやすいのですが(例えば、7月3日付ウェザーニュースで使われている画像など)、線状降水帯が発生すると、ほぼ同じ個所に次々と大雨を降らせる雨雲=積乱雲が発生し続けるので、「組織化した積乱雲群によって」、つまり通常であれば個々が単独で存在している積乱雲が、集合して巨大な積乱雲の塊となることによって延命し(参考:国立環境研究所熱帯域における雲の組織化の研究“)、いつまでたっても同じ場所にほぼ同じ規模の大雨が降るという状態が続きます。

同様に、偏西風(地球の自転が日本付近で吹かせている風)が雲を運んでいくコース(積乱雲の東隣にある地域)でも、次々発生した積乱雲=雨雲が、発生した傍から同じように流れてくるので、延々と大雨が降り続けることになります。

通常であれば「豪雨を降らせる雨雲」(積乱雲)が通過したら豪雨は止みますが(局地的な大雨=ゲリラ豪雨の発生がこのパターンです)、線状降水帯が発生した場合、次から次へと「豪雨を降らせる雨雲」が出来続けているので(=積乱雲が組織化し、線状に巨大化することによって寿命が延びるので)、いつまでも「同じ場所で」豪雨が降り続けてしまうわけです。

発生後は、線状に巨大化した積乱雲が偏西風によって流されていくため、積乱雲の東側エリアでも同様のこと(ひたすら降り続く豪雨)が発生します。

これだと、特に山の斜面にある道や住宅地、平地だったとしても河川流域エリアなどはひとたまりもありません。線状降水帯発生時は山の傍や川の傍、つまりは日本の大半があっという間に「ヤバイ地域」となってしまう危険性を持っているのですが、この場合の危険性とは脆弱なインフラによるものでは必ずしもなく、降雨量が軽々想定を超えてしまうことに依ってきます。

結果、

災害状況の投稿にしても、必然的に雲の動きをそのままなぞらえたようになってしまう、かつ非常時を知らせるものが多くなってしまうのですが、線状降水帯はしばしば警報級の大雨と共に、各地に災害をもたらします。

今回の線状降水帯発生による豪雨でも、熱海で土石流が発生した他、神奈川県内各地でも土砂崩れ・河川氾濫などの被害が発生しました。

 

熱海・土石流発生

発生現場(Googleマップ)

 

各社の土石流報道・動画

産経新聞の報道や、

NHKの報道、

さらには時事通信の報道等々、

Twitterの現地ユーザーによって投稿されたいくつかの動画が、報道各社を通じて広く拡散されました。

 

熱海の土石流発生による被害状況

7月6日21時の時点で判明しているのは、死者7名、安否不明者27名、住宅120棟が被害を受けたことの他、土石流発生現場の上流側で「盛り土」が行われていて、盛り土が崩れる形で土石流が発生したこと(以上7月6日付NHKの報道より)、土石流発生現場付近でメガソーラー(大規模太陽光発電所=大量の太陽光パネル)が設置されていたことと、土石流発生の関連が疑われていること(7月5日付産経新聞の報道などより)などです。

土石流による土砂は、熱海の市街地にも達しているようです(7月3日付NHKの報道より)。

今後現地の普及作業と共に進められるべきは土石流発生の原因調査で、その際には「盛り土の存在」「メガソーラー設置」との因果関係の有無が争点となることが予測されますが、6日の時点で、既に国交省などが調査を開始しているようです(7月6日付産経新聞)。

静岡県内では、今回土石流が発生した熱海の近隣地区にあたる函南町で、住民がメガソーラー設置反対の要望を県に提出していました(7月1日付NHK報道)。災害発生を懸念する形のもので、時期は今回の線状降水帯・土石流発生のまさに直前(7月1日)です。

メガソーラー=太陽光発電は、2011年3月の東日本大震災後に全国各地に急増した発電形式ですが、特にここ数年、山や緑を削って設置するタイプの太陽光パネルについて、環境破壊や自然災害(土砂災害など)発生のリスクが言われる機会や、住民が反対運動を起こすケースが増えてきました(参考:環境省 “太陽光発電施設等に係る環境影響評価の基本的考え方に関する検討会報告書 “)。

再生可能エネルギー“が尊重される近年の流れの中、「原発の代替エネルギー」として筆頭に近い候補にあたるメガソーラーを乱造していたら、今度は別の深刻な問題が発生してしまったという形ですね。

メガソーラーについては、「盛り土」共々因果関係を調査するとともに、今回の土石流の原因となったか否かのみ(関係なければそれでOK!)ではなく、そもそもの設置に伴う危険性自体を個別に再調査する必要がある話なのかもしれません。

 

神奈川県内の崖崩れ・土砂崩れ・河川氾濫情報

今回の線状降水帯がもたらした豪雨では、神奈川県内でも、各地で被害が出ています。

箱根・仙石原

仙石原の大涌谷で、土砂崩れが発生しました。7月5日付神奈川新聞の報道によると、5日現在50軒の温泉宿への温泉供給が止まっていて、普及には一週間程度かかる見通しです。

このほか、芦ノ湖で水位が上昇し、付近にある駐車場で魚が泳ぐ様子(7月3日付NHKの報道より)も確認されています。

 

平塚・金目川

7月3日朝、金目川の水位が上昇し、付近の駐車場に冠水している様子(7月3日付NHK報道)や、同じく金目川沿いの道でバス停が崩落し、付近の道が通行止めとなった様子(7月3日付神奈川新聞報道)などが報道されています。

 

横横(横浜横須賀道路)逗子インター付近他

のり面(=法面。切土や盛土により作られる人工的な斜面)が約90メートルにわたって崩壊し、再崩落の危険性もあることから、7月4日現在逗子インターは閉鎖され、普及の見通しは立っていません(7月5日付読売新聞7月6日付乗りものニュース7月5日付トラベルウォッチ)。

このほか、神奈川県内では4日現在128件の崖崩れが確認されています(7月5日付読売新聞)。

 

河川の氾濫による「洪水浸水想定区域図」等について(神奈川県HP)

県内の川と、川沿いで想定される浸水の程度がまとめられています。

 

国土地理院・ハザードマップポータルサイト

国土交通省国土地理院が提供している、ハザードマップ等のサービスが利用できます。

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