【ブックレビュー/エッセイ】井上尚弥『勝ちスイッチ』(2019年、秀和システム)

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【ブックレビュー/エッセイ】井上尚弥『勝ちスイッチ』(2019年、秀和システム)

2019年11月に行われた、フィリピンの5階級王者・ノニト・ドネア選手との死闘と勝利が記憶に新しい、井上尚弥選手の自伝本です。「勝ちスイッチ」が、ボクシング史に残るであろうそのドネア戦を前にして出されているというあたりも、なんともドラマチックなものを感じさせます。

冒頭から早々に自身を天才ではないと繰り返し述べ、その真意を明確に説明しきるあたり、言わんとすることの内容等々から元MLBのレジェンドプレーヤーであるイチロー選手を髣髴とさせますが、イチロー選手の言っていることをより分かりやすくシャープにする、その上でテーマをボクシングにすると井上尚弥選手の主張になるという感じです。

ちなみに井上選手は、世代的には二刀流・大谷翔平選手の世代で(井上選手が93年生まれ、大谷選手が94年生まれ)、井上選手・大谷選手の二人には面識もあるようです。著書などから判断する分に、野球以外のことに興味がない大谷選手、ボクシング以外のことに興味がない井上選手、という共通項があるようには感じました。

そんな井上選手がボクシングに臨む姿勢はとても真摯でかつストイックで、「ボクシング」を超えた一般論としても通用しそうな要素を持っていたりもします。

こと「何か」に臨むにあたって一番大切な姿勢は100%の準備である(ただしこれが厳しく難しい)、ではそこでいう100%とは何かが、「勝ちスイッチ」で一冊かけてまとめられているわけです。

とはいっても、井上選手の実体験に基づく部分が主になるので、中には「並の人間がこんなことしたら、下手したら死ぬ」というような内容も含まれていたりもします。例えば「インフルエンザに罹患しながらの試合前調整、最終的に二日間の絶食の後の試合」等ですね。

試合描写にしても、「調整はセンチ単位、ミリ単位で」という表現の延長に位置するかのように、コンマ数秒という単位のものがあったりしますが、ところによりまるで自分が試合をしているかのような臨場感があります。後半に至ると兄弟や親友の話し、奥さんとの馴れ初めや初めてのアルバイト経験など、内容がほのぼの化しますが、言葉選びも丁寧で、とても読み易い一冊でした。

横浜出身・在住。現在、主に横浜(みなとみらい線沿線中心)の街歩きガイド記事を書いています。鎌倉・江ノ電沿線街歩きや箱根エリアの他国内小旅行記事をはじめ、その他の話題もボチボチ。サイトへのご意見・ご感想等々は、お手数ですがPCからお願いします。

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