【ブックレビュー/ミステリ】西村京太郎『Mの秘密 -東京・京都513・6キロの間-』(角川文庫、2015年)

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【ブックレビュー/ミステリ】西村京太郎『Mの秘密 -東京・京都513・6キロの間-』(角川文庫、2015年)レビュー

いわゆるミステリの要素は申し訳程度に付されているものです。その意味での「ミステリ」に期待して手に取ると恐らく肩透かしを食うことになる一冊だと思いますが、終戦直後の日本における政治的混乱の要所が描かれた「Mの秘密」最大の魅力は、占領統治下の日本政治の矛盾点を問題提起した点にあります。

ちなみにタイトルのいう「M」とは、占領統治下の日本の最高権力者であった、ダグラス・マッカーサーのことです。作中にはもう二人ほど、イニシャル表記で「Y」という人物、さらに「K」という人物が出てくるのですが、それぞれ、Y=吉田茂、K=チャールズ・ケーディスです。

吉田茂は戦後日本の混乱期に長期政権を担った外務大臣上がりの首相、ケーディスは「新憲法」作成をはじめ、占領統治下の日本の再建築の要所を担ったものの、後にスキャンダルによって失墜することとなったGHQ・民政局の有力者ですね。

マッカーサーにうまく取り入ってはいたものの、ケーディスに憎悪の念を向けられていた吉田茂、マッカーサーとの不仲がささやかれ、かつGHQの有力者でありながら吉田茂に軽視されていたケーディス、吉田茂とは不思議と馬が合ったものの、ケーディスとの不仲が囁かれ続けたマッカーサーという三者三様の人間模様が、「ミステリ外のミステリ」を掘っていきます。

具体的には、憲法を柱とした占領統治を巡る問題のとらえ方に「M」「Y」「K」それぞれの違いがあって、その違いが意思疎通の融合やすれ違いとなりながら妥協点を見出し、具体化した時に「新憲法」を柱とした占領統治の矛盾点となっていく様子が描かれていきます。

このうち特にマッカーサーと吉田茂のやり取りを根拠とした戦後外交の作中解釈には、一部目を見張るものもあったのですが、戦後政治の一見分かりにくい部分がとても分かりやすく解説されています。

この作品をあえてミステリ風に作り上げたことの意味は、もちろん商業的な部分に宿るのでしょうが、ミステリ要素をカットし、ノンフィクション寄りの作品として出版されていたらどうなっていたのか、そんな「Mの秘密」を見てみたかったとは思いました。

横浜出身・在住。現在、主に横浜(みなとみらい線沿線中心)の街歩きガイド記事を書いています。鎌倉・江ノ電沿線街歩きや箱根エリアの他国内小旅行記事をはじめ、その他の話題もボチボチ。サイトへのご意見・ご感想等々は、お手数ですがPCからお願いします。

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