【ブックレビュー/ミステリ】西村京太郎『4つの終止符』(講談社文庫、1981年)

blog

この記事を読むのに必要な時間は約 1 分14秒です。

【ブックレビュー/ミステリ】西村京太郎『4つの終止符』(講談社文庫、1981年)

時刻表トリックがメインとなるのではなく、社会問題の渦中にある人間関係の妙や言動がトリックとなった、いわゆる社会派ミステリと呼ばれる作品です。初出は1964年、著者初の長編書下ろしミステリです。

1960年代前半=昭和30年代、当時まだ活気のあった町工場、町工場傍のバー、さらには付近にある薬局と、戦後昭和の下町を舞台とした懐かしい世界が描かれるのですが、その懐かしい世界で、工員さん、バーの女給さん、薬局の薬剤師さん達を巡る殺人事件が発生します。

事件の容疑者であり、作品の中心人物として描かれることになる人物・晋一は聴覚障害を持っていました。

ほぼ序盤から、当時の聴覚障碍者をとりまく風景がどのようなものだったのかという部分の描写に力点が置かれ、ストーリーの核となって進みます。結論から言うと彼は無罪なのですが、圧倒的な社会的弱者であるがゆえに、作中では比較的早い時期に、近代刑法が持つ原理の真逆を行く「推定有罪」的な圧力が働いてしまいます。

その悪材料をとりまく周辺事情には彼に利するものもぼちぼち混じっていたことから、作品中盤から佳境に至って、巻き返しが展開されるわけです。読みどころとしては、一つの事件を巡り、二重三重、あるいはそれ以上の事情が描写されつつ物語が展開される点です。

例えば、法廷における正義とはどのようなものなのか、報道が持つべき客観性・正義感とはどのようにあるべきものなのか、等々。

救われないといえば救われない話はまた、人の温かみの大切さを教えてくれる物語でもあるのですが、それでも悪くはない読後感と共に、様々な問題意識を与えてもらえます。

横浜出身・在住。現在、主に横浜(みなとみらい線沿線中心)の街歩きガイド記事を書いています。鎌倉・江ノ電沿線街歩きや箱根エリアの他国内小旅行記事をはじめ、その他の話題もボチボチ。サイトへのご意見・ご感想等々は、お手数ですがPCからお願いします。

けんいちをフォローする
blog
けんいちをフォローする
みなとみらい線沿線街歩き + 小旅行&Indoor Life
タイトルとURLをコピーしました