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【横浜山手芸術祭ユースギャラリー2022】横浜女学院展示

みなとみらい線沿線の四季

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【横浜山手芸術祭ユースギャラリー2022】横浜女学院展示

横浜女学院展示(外交官の家会場)

山手芸術祭・ユースギャラリー(西洋館公式サイト公式パンフレット)、イタリア山庭園公式サイト)入ってすぐのところに位置する外交官の家公式サイト)では、横浜女学院の中高生の作品が展示されていました。前回2020年のユースギャラリーでは、横浜共立学園の中高生共々、同じくイタリア山庭園内にあるブラフ18番館で行われましたが、今回はその隣にある外交官の家にて発表が行われました。

展示は、外交官の家入り口傍のところに飾られた水墨画からです。

古代より伝わる画風でスマホに止まる蝶が描かれていたり、アプリのアイコンが描かれているあたり、最新機器や技術の浸透や馴染み具合を思わされます。他の風景画にしてもそれ(現代の建築技術など)を思わせるものが含まれていますが、例えば1000年位前(古代~中世初期)の人たちがここに展示された水墨画を見たら、なじみのある画風の中に何を見出すのか、翻ってそれが現在を生きる自分たちが身を置く環境なんだというようなことがゆっくり染みて来ます。

一転してその隣では、モチーフにも割と伝統的なものが含まれた王道的な水墨画が展示されていて、さらに奥に進むと色のついた絵の展示コーナーが設けられています。

カラー絵は、中学2年生が描いた”抽象表現”です。具体的に存在する何か(実体)を描くのではなく、”想像(イメージ)上の何か”を具体的に絵にするという、中々難しいテーマだと思うのですが、パッと見ただけでも色々盛りだくさんな情報が発信されています。

抽象的なものをテーマにしている以上、ただ黙って展示されるだけでは作品の奥まで覗けませんということで、一枚一枚の絵に丁寧な解説が付されているのですが、例えば中央にある四枚の絵は、それぞれ『音の感情』(左上)、『緊張』(右上)、『私の悩みから解決まで』(左下)、『いろんな泣き』(右下)で、一枚一枚に丁寧な解説が付されています。

一つ一つの瞬間に込められた感情が丁寧に表現されていることが解説から理解できるので、なるほど多感であるとはこういうことかという、表現の意味がしっかり伝わって来ます。小説や論文・レポートならプロットの解説、運動部なら練習メニューの分析といったところでしょうか。一般論的には、創作作品の原点付近にある表現がまさにここですよね、なんて感じました。

さらに奥に進むと、旧内田邸時代は食堂として使われていた部屋と、

さらにその奥の部屋(かつての応接間)で、共に陶器が展示されていました。

テーマは”使いたくなるものを作ろう”で、中学一年生の作品です。

横浜女学院の美術室には陶芸用の電気釜があって、作品はその電気釜を用いて作られたようです。

旧・食堂だった外交官の家のこの部屋で日常使われていても不思議はないような陶芸品が所狭しと並べられているので、どこか”美術作品の展示”とは違ったニュアンスで風景に溶け込んでいるようにも見えます。

陶芸コーナーメインの一画を過ぎると、食堂隣の部屋からは、油絵も一緒に飾られています。応接間では、テーブルの上に並べられた陶器共々、部屋の雰囲気に溶け込むように飾られていますが、

階段傍のスペースでは、高校2年生の作品である、特大の油絵が展示されていました。

ウォールアート風にも見える前衛的な雰囲気を持った一枚、ラッセン風に見えるようにも感じるという売れ線風の一枚、名画風に淡いイメージでまとめられた定番風の一枚と、バランス良く三枚の秀作が並べられた一画は、中々迫力がありました。

二階の展示会場では、油絵の展示が続きつつ、ポスターの展示もはじまります。

ちなみに一枚一枚のポスターが描き、主張するのは、社会問題をテーマとした啓発です。

美術作品が社会へのメッセージを内包しているという、中々意識の高い一帯ですね。

それぞれのポスターが訴えているのは、行き過ぎた近代化がもたらす弊害や、”平等”観念の欠如、あるいは捉え方の齟齬がもたらす危険、

さらには環境破壊や地球温暖化問題への警告です。

有史以来(あるいは以前から?)人類が地球規模で抱えていた問題や、産業革命によってもたらされた”近代化”の負の遺産を含む、まさに人類にとって現在進行形の問題となっている課題の数々が提示されているのですが、どの問題をとっても一朝一夕での解決が難しい、甲論乙駁の議論が繰り広げられた先で具体策が展開されている真っ只中ではあります。

例えば特定外来生物(参考:環境省 “特定外来生物とは何か“)の繁殖については、前掲の諸問題に比べると分かりやすい原因による(例えばペット飼育の放棄など)ことも多かったりしますが、身近なところでは”ペットの放流”を主要因として外来種の宝庫になってしまったことから”タマゾン川”などと呼ばれて久しい多摩川に、特定外来生物であるアリゲーターガーが生息しているような例が挙げられます(”多摩川に住む特定外来生物”のくくりでは、他ブルーギルやブラックバスなど)。

現在は外来生物法によって指定生物の取扱いに一定の禁止事項が設けられてもいますが、結局は人間側の一方的な都合で生活拠点を変えられた上で今現在があるにもかかわらず、時に駆除の対象となってしまうだけに、”悪者にはなりたくない”は言い得て妙な表現ですね。

(外来生物法について、参考:環境省・日本の外来種対策外来生物法“、e-gov特定外来生物による生態系等に係る被害の防止に関する法律(=外来生物法)“指定生物の取り扱い禁止事項について、環境省公式 “何が禁止されているの?“)。

二階最後のコーナーでは、プロテスタント系の学校らしく、ガラス窓一面のステンドグラス展示で締められていました。

順路に沿って歩くと二階への入り口と出口が異なるのも外交官の家の特徴なのですが、

帰り際まで来訪者を楽しませてくれる、盛りだくさんの展示発表でした。

 

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