日本一のモグラ駅＝土合駅着
土合駅ホーム
土合駅着
水上駅を出発後、次の次の駅が土合駅（みなかみ観光協会公式サイト “土合駅“）です。
谷川岳超えのために作られた新清水トンネル内、地下70メートル（海抜５８３メートル）のところに位置しているという“日本一のモグラ駅”ですね。
JR横浜駅からJR高崎駅まで上野東京ラインで２時間半弱、高崎駅からはJR上越線で水上駅まで約１時間、水上駅出発後”モグラ駅”＝土合駅到着までは大体10分程度と、水上駅に着くまでがそこそこ長いのですが、水上駅からは割とすぐです。
水上駅発長岡方面行き上越線の日中の運行ペースはほぼ3時間に一本で（参考：ジョルダン “水上駅（上越線 越後湯沢方面）の時刻表“）、なおかつ一日５～６本しか運行されていません。
その分、乗ってほぼ10分程度で下車してしまうということ自体が惜しいといえば惜しいところではあったのですが、時に出てくるこのもどかしい感じもまた、18きっぷ旅ならではという”旅情”の一つでしょうか。
程なく電車は土合駅を出発して、長岡駅方面へと向かいました。
土合駅の次の土樽駅は、川端康成の小説「雪国」でいうところの“国境の長いトンネル”（参考：雪国の宿 高半、湯沢町歴史民俗資料館・雪国館）を抜けた後、最初の駅に当たります。
土合駅までが群馬県、土樽駅から先は新潟県です。
土合駅ホーム
駅名標を撮影した写真も心なしかどこか寒々しく映っているようにみえますが、ホームに降り立つと、どこか真夏でもひんやりとしています。そのひんやり感こそ駅の個性の一つとなる部分なのですが、土合駅ではこの地下空間を熟成用の貯蔵庫として利用した、クラフトビールも作られているようです（Brewing for Nature “日本一のモグラ駅で、熟成ビールを作ろう“）。
駅名標の右側奥には、これも土合駅名物である、地上階への長い階段が作られています。
ホームにかかる靄と、モグラ駅の階段
写真だと少々わかりづらいのですが、電車出発後の駅のホームに薄い靄がかかっています。
理由の一つとして考えられそうなのは、駅ホームの温度と車体の温度のギャップですか。
夏の日差しに熱され続けた車体と共に運ばれた空気が地下70mのひんやりしたホームに持ち込まれれば、蒸した空気は地下の低温に反応する形でモヤとなる、つまり“冬場に吐く息が白くなる”現象と似たようなことが起こったとしても不思議はないですからね。
ですが、そんな事情に感心してばかりもいられません。
下り土合駅ホームの場合、下車後の本番はいよいよここからですからね。
“モグラ駅”のホームから、地上階へ
スタート地点
まずは、地上階への階段のスタート地点まで。
ひたすら一直線に作られているという壮観な階段のはるか先に、一点透視図法の消失点のようなゴールが見えています。
単にホームから地上階へというよりは、どこか“天界への階段”を感じさせるような果てしなさも伝わってきますが、実際目の前にしてみると聞きしに勝る迫力がありました。
ホーム階と地上階の標高差はなんと70.7ｍ、ワンフロアの高さをおよそ3メートルと見積もると、20階前後のビルに等しい高低差があるという、462段の階段です。
全338mあるようです。
最初の一歩を踏み出して、まずは10段目まで。
上り始めたばかりだと、まだまだ、ゴール＝地上は気が遠くなるようなところに位置しています。
消失点も、ほぼ消失点のままです。
湧水（？）と、中盤付近の上り階段
上り階段の左側には側溝を兼ねたような、どこか削られた山中がむき出しのまま残されているように見えるスペースがあって、そこを地中に浸透した雨水かわき水か、それとも雪解け水か、何らかの小さな水の流れが下方に向かって続いています。
地表を流れ落ちるだけではなく、壁面からも水があふれてきているのが分かりますが、”谷川岳のわき水”的な何かでしょうか。
余談として、飲用に適する谷川岳の雪解け水（谷川の六年水）を無料で提供していると言う、関越道の谷川岳PA（下り、上り）は、土合駅の隣の湯檜曾駅がJR上越線の最寄り駅です。群馬県では色々なところに湧水があるようですが、当然のこととして全てが飲用に適しているわけではないという点には、注意が必要です（参考：環境省公式サイト “代表的な湧水・群馬県“）。
462段ある階段の100段目に到達しました。
この辺りからが、いよいよ地上階への階段・本編スタートです。
トンネル内の階段ではまた、およそ100段程度ごとに木製のベンチが設置されていたような記憶がありますが、このベンチが土合の階段では実にありがたい設備となってくれます。
さらに100段。
一旦「キツイ」と足腰が感じ始めてからは、一歩一歩が歩みを進めるごとに重くなります。
200段も上ってくると、今度は逆にスタート地点が”消失点”に近づいていきます。
さらに100段。
200段目付近と比べても、スタート地点がさらに”消失点”化していますが、このあたりから先は、誇張抜きに一段一段を上ることがハードルとなってきます。
うれしいニュースとしては、ぼちぼちゴールもはっきり見えてきます。
階段の上にある通路の天井が見え始めました。
ラストスパートと、とどめの階段たち
さらに100段。
残りは62段、ゴールはすぐそこで、
反対に、ホーム階はほぼ消失点となっています。
息を切らしながらハンカチで汗をぬぐって上り階段を進む、途中すれ違いで下り階段を進んでいく地元の人風の人に「こんにちは」とあいさつをされ、こちらも「こんにちは」と挨拶を返すという、ほぼ登山状態だった上り階段も、とうとうゴール！
462段踏破の瞬間です。
“膝が笑う”という表現の意味するところを久しぶりに少しだけ体感出来た瞬間でもありましたが、階段を上り切った瞬間に、心なしか少しだけ疲労が回復したような気分にもなれました。
上り切った瞬間にピンポン玉やスーパーボールを落としてしまったらどんな気分になるんだろう、などと恐ろしいことを考えると、それだけでひざが砕けそうです。「停電になった超高層ビルで最上階までの非常階段を上り切った後、地上階に鍵を忘れてしまったことを思い出した」という”怖い話”がなぜか頭をよぎったりもしましたが、
ともあれ、目の前に漸く階段じゃない道が開けました。
土合駅ホームにて上越線から下車して以来、約20分ぶりくらいの出来事です。
ホーム階には「10分程度で上れる」とありましたが、あれはおそらく常日頃からある程度体を動かしているという、中〜上級者向けの案内ですね。
通路は、小さな川（湯檜曽川）の上に通されている、橋のような通路となっていますが、
どうやらここで”駅出口です”となるのではないようで、不穏な告知として「あと改札まで143m、階段が24段」あるとのこと。
「いや、マジで・・・？」
と、この告知にはかなり気力を削り取られそうにもなったのですが、告知云々以前に、既に扉の向こうには階段が見えています。
ならば、進むまで。
ほぼ地上階にいて改札まであと少しということもあってか、この辺りの通路は気力体力の回復ゾーンのような一帯でした。
これでもかとばかりに細かい階段の連打が続きますが、
いよいよ土合駅最後の階段へ。
486段を上り切りました。
とにかく疲れましたという気持ちと、ほっとした気持ちが一緒になったような達成感が濃かったです。
階段回顧
正直言うと「まぁなんとなかるだろう」と高をくくっていた部分は結構あったのですが、実際に上ってみたところ、常日頃の運動不足が祟ったせいもあってか軽く想像の数倍程度はキツかったです。
事前に土合駅のことを調べた時に、「土合の階段はとにかくゆっくり上れ」というような注意喚起を方々で目にした記憶があるのですが、この点にはひたすら同感ですね。
具体的にキツいと思い始めたのは概ね100段目から200段目のあたりで、ひょっとしてとんでもない駅で降りてしまったのでは？という気持ちがじわじわとこみ上げてきた後、300段目付近より先に至っては特に足腰に来ました。
とはいえ、結局のところ上れるのかそうでないのかといえば、上れるには上れます。
常日頃から慣れているか、あるいはきちんと運動をしていれば、恐らくは普通に登れる階段ではあると思いますが、その場合にしても、おそらく楽に上れると言うことはないのではないでしょうか。
いずれにしても、先を焦らず、ゆっくりペースで一段一段上っていくというペースがお勧めですね。
地上階にて
通路に作られた窓からは、山小屋風に作られた土合駅の駅舎が見えています。
“地上”を改めて実感した瞬間でもありました。
土合駅には、駅直結のグランピング施設である“DOAI VILLAGE”（公式サイト）が併設されているのですが、下り線ホームから続いている連絡通路沿いに出入口が用意されています。
施設利用者は、この出入口を自由に行き来できるようです。
改札へは右側へ、
背後には、
“日本一のモグラ駅”へと続く通路です。
通路を右折し、ようやく改札が見えてきました。
上越線下車後、ややゆっくりめに進みながらの、都合20分程度の”ミニ登山”のゴールの瞬間です。
