about 青春18きっぷ
旧→新、青春18きっぷの主な変更点
“青春18きっぷ”は、全国のJRの普通・快速電車が一定期間(3日間or5日間)乗り放題となるチケットで、全国のJRの主な駅(切符売り場がある駅の窓口or指定席券売機)、およびみどりの窓口や駅たびコンシュルジュ等にて購入可能です。
24年冬、従来より販売されていたものに一部修正が加えられたことで話題となりましたが、以下、現在発売されている”新・青春18きっぷ”につき、詳細をまとめました。
新・青春18きっぷの概要
価格・効力他\新・旧 | 新・18きっぷ(現行) | 旧・18きっぷ(廃止) |
販売期間・利用期間 | 毎年春夏冬の指定期間(後述) | 毎年春夏冬の指定期間(後述) |
価格 | 3日間用(3枚綴り):10000円 5日間用(5枚綴り):12050円 |
5日間(5枚綴り):12050円 |
有効期間 | 3日間用:連続する3日間 5日間用:連続する5日間 いずれも、利用開始日より起算 |
春夏冬の利用期間内の、 任意の5日間 |
きっぷ一枚の効力 | 3日間用、5日間用とも、 きっぷ所持者のみ使用可 |
一人一枚利用可 (本人以外の利用も可) |
現在発売されているのは”新・18きっぷ”です。
“旧・18きっぷ”の効力は、現在の18きっぷには適用されません。
発売期間・利用期間については新・旧共通、概ね下表の通りです。
発売期間 | 利用期間 | |
春の18きっぷ | 2月下旬〜3月末 | 3月はじめ〜4月上旬 |
夏の18きっぷ | 7月はじめ〜8月末 | 7月下旬〜9月上旬 |
冬の18きっぷ | 12月はじめ〜12月末 | 12月上旬〜翌1月上旬 |
参考までに21年度の例に倣うと、
- 春の18きっぷは2月20日~3月31日発売、利用期間は3月1日~4月10日
- 夏の18きっぷは7月1日~8月31日発売、利用期間は7月20日~9月10日
- 冬の18きっぷは12月1日~12月31日発売、利用期間は12月10日~22年1月10日
となっています。
購入時の注意点としては、例えば指定席券売機は設置駅・券売機ごとに営業時間がまちまちになる場合がある他、窓口購入の場合についても、駅(特に地方駅など)によっては営業時間内に駅員さんが不在である時間帯が生じる場合があります。
なので、忙しない当日購入よりは、ゆとりを持った事前購入推奨です。
参考
- JR東日本公式サイト “指定席券売機ご利用案内“、”駅たびコンシェルジュ“、”みどりの窓口のある駅“
- JR東日本公式 “「青春18きっぷ」「青春18きっぷ北海道新幹線オプション券」 の発売について“
- NHKニュース ““青春18きっぷ”利用方法変更へ 複数人での利用など不可に“
販売期間・利用期間
既述のように、例年春・夏・冬、“利用可能期間”に10日〜20日ほど先行して販売が開始され、販売終了後10日ほどで利用可能期間が終了します。
この点についての変更は無く、秋の販売も今のところ予定されていないようです。
価格
「5日間用・12050円」の設定はそのまま持ち越されることになりました。
その分、新設された「3日間・10000円」の価格設定に割高感が宿ります。
とはいえ、これはあくまで前者が持つ破格感からくるイメージであり、今日的な適正価格は後者であると思われます。
有効期間
こと「利用期間」で比較するのであれば、旧18きっぷは「18きっぷの利用可能期間いっぱい」だったことに対して、新18きっぷは5日間用であれば「利用開始日から連続する5日間」、3日間用であれば同様に「利用開始日から連続する3日間」となりました。
今回の(自動改札対応を目的とした)改変にて、最も物議を醸した点ですね。
きっぷ一枚の効力
「一枚につき、一人・一日」だった旧18きっぷに対して、新18きっぷでは「きっぷ所持者に限り、一枚で一日」となりました。
旧→新の変更によって「複数人での利用」が廃止された形ですが、ここも微妙に物議を醸したようです。
とはいえ、現在の18きっぷは”一人旅利用者”が中心であることから、ユーザー一般にとっても実質そこまで大きな衝撃にはならなかったのではないか、とも見られています。
18きっぷ、変更点の内実
今回の改変は概ね”改悪”と捉えられたうえ、ネット上ではリニューアル中止を求める署名活動なども行われているようですが、以下、主要な変更点について、少々補足を加えました。
“従来通り”を考えた場合
「任意の5日間」利用可能だった切符が「連続する3日間、あるいは5日間」利用可能な切符になったあたり。
それでも切符を枚数分使い切ろうと思えば、その時には2泊3日or4泊5日の”乗り鉄”をメインとした旅行をせざるを得ない(旅行計画のスタート地点に、事実上その枠が用意されている)ということで、やや窮屈なきっぷになってしまった感は否めません。
元々そういう使い方をしてきたという層にとってはともかく、バラで切符を使う旅で18きっぷを楽しんでいた層にとっては致命的とも言える改変になっている、その意味ではもはや「のびのび」要素は残されていないということですね。
18きっぷの最大級の個性の一つだった”ざっくり感”が丸ごとカットされたということで、より国鉄(=公営組織)色が薄まったと同時に、”JRならではの営利追求色”が濃くなったという見方もできるところではありますが、まずはそれでも切符を利用してお得に旅をしようと考えるのであれば、根本的な発想の転換が必要となります。
参考
“お得”なケース -長躯の往復チケットとして-
アイデアはいく通りか存在すると思いますが、そのうちの一つに「18きっぷは現地までの長躯往復のために利用する」という割り切った利用法があります。
もし「元を取れればそれでいい」と考えるのであれば、それぞれざっくり換算で
- 3日間用であれば片道5000円以上(281〜300キロ、5170円)
- 5日間用であれば片道6025円以上(341〜360キロ、6050円)
の距離を乗ってしまえば、往復の行程のみで切符購入の元が取れます(JR東、東海、西3社の場合)。
旧・18きっぷでももちろんそういう使い方はできたのですが、自由度の高さが売りだった”旧”にあっては、そのような使い方「も」出来る、と言った感じだったでしょうか。
今回の改変によってより短い距離でもそのような利用が可能となった点は、“3日間用”の切符が新設されたことによる数少ない恩恵の一つですが、一例として、東京駅発の利用を考える場合(表中リンクはGoogleマップ、キロ数は東京駅からの営業キロ数です)、
281キロ超え地点(※1) | 341キロ超え地点(※2) | |
東海道本線 | JR東海・新所原駅(282.4キロ) | JR東海・刈谷駅(341.6キロ) |
東北本線 | JR東・伊達駅(281.9キロ) | JR東・名取駅(341.4キロ) |
中央本線/大糸線 | JR東・簗場駅(281.7キロ) | – |
上越線/信越本線 | JR東・見附駅(282.0キロ) | – |
上記の駅を含め、それより先に進む(かつ、往復利用する)場合は、(※1)が3日間用18きっぷの、(※2)が5日間用18きっぷの、それぞれ“元が取れるライン”です。
ちなみに、中央本線/大糸線と、上越線/信越本線は、それぞれ終着駅のJR西・糸魚川駅までが340.8キロ(残0.2キロ)、JR東・新潟駅までが333.9キロ(残7.1キロ)なので、東京駅までの加算距離によっては”341キロ”超えとなって、「往復だけで元が取れるエリア」に含まれることになります。
参考までに、京浜東北/山手線の東京駅からの距離で言うと、
東京駅から0.2キロ以上 | 東京駅から7.1キロ以上 | |
品川・大船方面 | 0.8キロ(有楽町駅) | 9.2キロ(大井町駅) |
上野・大宮方面 | 1.3キロ(神田駅) | 7.1キロ(田端駅) |
が、それぞれ“距離不足分”の調整区間です。
東京駅”経由”の旅であれば、中央本線/大糸線や、上越線/信越本線への旅だったとしても、おそらくは”5日間用チケット”でも元が取れる旅となることが多いのではないでしょうか。
この点、現実問題としては、首都圏と中京圏・近畿圏・北陸圏・東北圏の短期の往復移動を考える際、深夜バス・長距離バスとの競合が考えられる部分ですね。
一例として、東京駅-三ノ宮駅(神戸)間を移動する場合。
東京駅をお昼過ぎ(13時台)に出発したとしても、普通列車のみでその日のうちに三ノ宮駅まで進むことは可能です(逆も然り)。
中央本線/大糸線、上越線/信越本線方面への移動でも、乗り継ぎ上ほぼここに準じたプランが想定されますが、東京駅から名古屋駅へ移動する場合については、夕方発(17時台発)でもその日のうちに移動が完了します(同じく、逆も然り)。
ということで、それが二泊三日〜四泊五日程度の行程である場合。
「片道5000円or6025円の費用で、SNS等の小ネタも拾える」18きっぷを利用した普通列車旅は、一つの選択肢として普通にありではないかと個人的には思います。
参考
乗車可能な電車、不可な電車
原則として、JRの普通・快速電車にのみ乗車可能です。
“例外”や、乗車できない電車等については、別記事にまとめました(後日配信予定)。
【JRグループのお得切符】青春18きっぷで乗れる電車、乗れない電車、オプション
3日間10000円、5日間12050円という価格設定
(参)秋の乗り放題パス (9月中旬~10月中旬、連続する三日間のJRグループ各線乗り放題チケット) |
7850円 |
3日間乗り放題 | 10000円 |
5日間乗り放題 | 12050円 |
6日間乗り放題 | 20000円 (3日間×2) |
8日間乗り放題 | 22050円 (3日間+5日間) |
10日間乗り放題 | 24100円 (5日間×2) |
新・18きっぷの価格設定は、5日間きっぷが従来通りの12050円であることに対して、新設された3日間きっぷは10000円です。
秋の乗り放題パスと比較しても“三日間10000円”が結構な強気設定となっていることが伺えますが、それ以上に目を引くのが、旧→新の改変でも持ち越された12050円の値付けです。
特に“6日間”の価格設定を柱としてその前後を比較した場合が分かりやすいですが、新設されたチケットの値段をやたら高く感じてしまうのも、全ては“従来型の18きっぷが神チケット過ぎた”故のアンバランス感があってのことなんですね。
6日間分利用する場合に2万円かかるところ、そもそも5日間分であれば12050円で済む、8日間分利用しても22000円で済む、10日間分に増やしたところで24000円で済むといった具合に、5日間チケットを絡めた場合の価格がことごとく破格となっています。
つまり、”新・18きっぷ”の利用に当たっては、3日間用のチケットで元を取れる利用(前記した、長躯の往復チケット利用)をする場合以外、原則として”5日間用”チケットをベースとした利用がお得になるという点は、18きっぷを購入するにあたり、覚えておいても損はないポイントかもしれませんね。
複数人での利用廃止 -自動改札対応優先-
今回の改編では、一人一枚の(=他者への譲渡が無い形での)切符での自動改札対応がマストだと考えられていたために、まずはここ(5枚綴りの切符をバラして使う、複数人での利用廃止)が変更点とされたようです。
利用状況的にも、現在はそれほどグループ客が多くない(圧倒的に一人旅か、もしくはそれに近い形の利用が多い)という現実があるにはあるようなので、変わるべくして変わったと言う部分かもしれません。
利用期間が「任意の5日」から「連続する三日間」「連続する五日間」に変更
今回の改編で、恐らく今のところ一番の反対が集中しているポイントがここですね。
ただし「連続する三日間・五日間」の縛りについては、前記した“複数人での利用廃止”同様、あくまで自動改札の性能にあわせた結果の改編だったということらしいので、あくまで試験的にこうなった、先の予定については現段階では不透明だと言うことでもあるようです。
あるいは「改変反対」の声を上げ続けることで、将来的な”旧きっぷ復活”も望めるのかもしれません(?)。
参考
- 日テレニュース “青春18きっぷ改定『5日間連続使用のみでの仕様に変更』 これまで利用期間中は5日分を自由に使用可能が… 3日間用の切符も登場 試験的に導入“、”人気の「青春18きっぷ」リニューアルのワケをJRに聞いた 自動改札可能に 3日間用も新発売 一方、新たな“制約”も“
私見 -青春18きっぷは、近い将来廃止される?-
国鉄末期にあたる1982(昭和57)年。
“青春18のびのびきっぷ”と言う、現在とは別の名前を持つ切符として発売が開始された”青春18きっぷ”は、日本国有鉄道=国鉄時代の遺産のような企画切符です。
“18きっぷ”誕生の5年後にあたる1987(昭和62)年に国鉄が解体されてから今年2025(令和7)年ではや38年目となりますが、JR東日本の社員の平均年齢が大体35~40歳、平均勤続年数が十数年であることを参考にして、定年を60歳でカウントする場合。
既に「国鉄時代を知る人」の方が少なくなって久しいことが推定されるのもまた、昨今の現実です。
今のJRで国鉄時代を現役社員として知っているのは一番若くても定年間近、50代半ばの社員であるあたり、少なくなって久しいというよりは理論上はほぼいないとした方が正確なのかもしれません。
そうであれば、JR各社に残るのは「国鉄時代の雰囲気を色濃く持った18きっぷ」への違和感だとなってもなんらおかしくもないところで、ことと次第によっては「青春18きっぷなる切符が未だに存続していること」の方に疑問を感じる社員が増えたとしても、それはそれで自然な流れでもありそうです。
もちろん、“18きっぷ”がJRグループの人気商品であるうちは存続が前提となるでしょうが、仮にひとたび不採算、あるいは割に合わないと判断されるようなことになれば、真っ先にテコ入れすべき事業の一つにカウントされたとしても、なんら不思議は無さそうなところですからね。
かつての花形列車である”ブルートレイン”や”寝台列車”が次々消えて行った理由と軌を一にするところともなりますが、ドル箱であるうちはともかくとして、そうでないならそれはそれ、これはこれなのでしょう。
とはいえ、これはあくまで私個人的にはそう感じたという次元の話でしかないのですが、巷間の噂に上がっているように、本当に近い将来18きっぷが廃止になるのかというと、さて、それはどうだろうか(流石に、早急に廃止されるというようなことはないのではないかな?)、とは強く感じます。
前記したように、そもそも18きっぷ自体が国鉄時代の遺産そのものだという性格を持つものです。
ひとたびJRがこの切符を廃止してしまったら、改めて同じくらい強力な企画切符を作り直すことはまず不可能であると思われることから、余程の事情でもない限り廃止になることはあり得ないと考えられます。
仮に廃止が決められるとすれば、それは存続より廃止が合理的だと考えるに足るだけの、なんらかの深刻な事情が生じた場合の対応策として、と言う形になるのでしょうか。
この点、改変直前までの話であれば、そもそも18きっぷの存続がJR各社に莫大な赤字を垂れ流すような要素って一つもない、どころかむしろ一説によると滅茶苦茶利益率がいい(と、推定される)切符でもあったようではあります(※)。
発売期間になったからと切符を売りに出したところで、JRとしてはほか、そのために特に何をするでもない、いつもと同じ仕事をしている時に“18きっぷ”の売り上げ分が利益として加算され、その分の繁忙期の乗客数を淡々と増やしている(なおかつこのお客さんは、ニューデイズやJRホテルを筆頭とするJR関連施設にお金を落とすことも十分に想定できるお客さんともなる)わけですからね。
この点からは、廃止につながるに足るだけの理由って、なかなか見出せそうにありません。
一方で不安要素として年々拡大しているのが、鉄道利用者のマナー低下です。
なんとも言い難いところではあるのですが、最悪の推移を重ねていった場合は、あるいは本当にこのまま”18きっぷ消滅”へとつながる未来が用意されてしまうのかもしれません。
JR各社から新たに企画切符が続々リリースされている昨今。
それでも”18きっぷ”は根強い定番商品なだけに、逆にそのことが災いする形となっての”切符廃止”だけは、やぱり杞憂となって欲しいところですね。
参考