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【群馬/新潟青春18きっぷ旅:初日その14】日本一のモグラ駅・上越線の土合駅へ
日本一のモグラ駅=土合駅着
土合駅ホーム
土合駅着
青春18きっぷを用いた普通列車の旅の場合、JR横浜駅からJR高崎駅まで上野東京ラインで2時間半弱、高崎駅からJR上越線の水上駅までが約1時間、その水上駅を出発後、次の次の駅が土合駅(みなかみ観光協会公式サイト “土合駅“)です。
地下70メートルのところに作られた”谷川岳超え”新清水トンネル内の駅で、”日本一のモグラ駅”とも呼ばれている駅ですね。
水上駅出発後、”モグラ駅”=土合駅到着までは大体10分程度です。
首都圏からの行程だと、かつての上越線の主要駅だったという水上駅に着くまでがそこそこ長いのですが、水上駅からは割とすぐのところに位置しています。
上越線(水上駅発長岡方面行き)の日中の運行ペースはほぼ3時間に一本で(参考:ジョルダン “水上駅(上越線 越後湯沢方面)の時刻表“)、なおかつ一日5~6本しか運行されていません。その分、乗ってほぼ10分程度で下車してしまうということ自体が惜しいといえば惜しいところではあったのですが、時に出てくるこのもどかしい感じもまた、18きっぷ旅ならではの”旅情”の一つではあります。
駅名標を撮影した写真も心なしかどこか寒々しく映っているようにみえますが、ホームに降り立つと、どこか真夏でもひんやりとしています。
土合駅では、この地下空間を熟成用の貯蔵庫として利用した、クラフトビールも作られているようです(Brewing for Nature “日本一のモグラ駅で、熟成ビールを作ろう“)。
地下70メートルにして海抜583メートルの地点にある駅、というのもそうそうあるものではないと思いますが、数字だけ見ていると、ここは地底なのかそれとも山の上なのか、そもそもそのあたりから分らなくなってきそうなところでもありますね。
地下鉄駅といえば地下鉄駅っぽい雰囲気を醸す駅でもあったような記憶はあるのですが、だとしても、下車した時点でそもそも普通の地下鉄駅とは少々何かが違うことを感じさせる駅でもあったような記憶も残っています。
一つには構内の”ひんやり”感、ついで駅の作りのそっけなさがそう感じさせた主な理由だったのですが、やはりこの辺りは土合駅が”日本一のモグラ駅”だという予備知識あってこそ、そう思わされた部分だったのかもしれません。
電車は土合駅を出発して、長岡駅方面へ。
土合駅の次の土樽駅は”国境の長いトンネル”(参考:雪国の宿 高半、湯沢町歴史民俗資料館・雪国館)を抜けた後最初の駅に当たりますが、土合駅はその”長いトンネル”の真っ只中にある駅です。駅名標の右側奥には、地上階への階段が作られています。
ホームにかかる靄と、モグラ駅の階段
写真だと少々わかりづらいのですが、電車出発後の駅のホームに薄い靄がかかっています。
理由の一つとして考えられそうなのは、元々の駅ホームの温度と、車体の温度のギャップですか。
夏の日差しに熱され続けた車体が運んできた空気が、地下70mのひんやりしたホームに押し込まれてしまえば、冷たい空気に反応して気化していた水蒸気が液化してしまう、という”冬場に吐く息が白くなる”現象と似たようなことが起こったとしても、不思議はないですからね。
本当のところはわかりませんが、電車通過後にホームの端には白く薄い靄がかかっていた、そしてホーム自体はひんやりしていたということで、この靄には”地下70m”を感じさせられました。
ですが「なんだかすごいところに来てしまったな」と、感心してばかりもいられません。
というのも土合駅の場合、下車後の本番はいよいよここからなんですよね。
ホーム付近からだとほぼ上り始め部分の階段のみが視界に入って来ますが、この先に、とんでもなく長い地上階への階段が続いています。
“モグラ駅”のホームから、地上階へ
スタート地点
ということで、地上階への階段のスタート地点まで。
ひたすら一直線に作られているという中々壮観な階段のはるか先に、一点透視図法でいうところの消失点のようなゴールが見えています。単にホームから地上階へというよりは、どこか”天界への階段”的な果てしなさも伝わってきますが、実際目の前にしてみると、聞きしに勝るという迫力がありました。
ホーム階と地上階の標高差はなんと70.7m、ワンフロアの高さをおよそ3メートルと見積もると20階前後のビルに等しい高低差があるという、462段の階段です。
全338mあるようです。
最初の一歩を踏み出して、まずは10段目まで。
上り始めたばかりだと、まだまだ、ゴール=地上は気が遠くなるようなところに位置しています。
消失点も、ほぼ消失点のままです。
湧水(?)と、中盤付近の上り階段
上り階段の左側には側溝を兼ねたような、どこか削られた山中がむき出しのまま残されているように見えるスペースがあって、そこを地中に浸透した雨水かわき水か、それとも雪解け水か、ともかく何らかの小さな水の流れが下方に向かって続いています。
地表を流れ落ちるだけではなく、壁面からも水があふれてきているのが分かりますが、”谷川岳のわき水”的な何かでしょうか。
そういえば、飲用に適する谷川岳の雪解け水(谷川の六年水)を無料で提供している関越道の谷川岳PA(下り、上り)は、土合駅の隣の湯檜曾駅がJR上越線の最寄り駅です。トンネル内の階段では晴天日でも湧水が続いているというあたり、類似の、あるいはほぼ同じ理由から湧いている水ではあるのでしょう。
実際、群馬県では色々なところに湧水があるようですが、当然のこととして全てが引用に適しているわけではないという点には、注意が必要ですね(参考:環境省公式サイト “代表的な湧水・群馬県“)。
トンネル内の階段ではまた、所々に木製のベンチが用意されています。
およそ100段程度ごとに設置されていたような記憶がありますが(?)、このベンチが、土合の階段では実にありがたい設備なんですよね。
462段ある階段の100段目に到達しました、というこの辺りからが、いよいよ地上階への階段・本編スタートです。
さらに100段。一旦「キツイ」と体(特に足腰)が感じ始めてからは、一歩一歩が歩みを進めるごとに重くなります。
さすがに200段も上ってくると、既に結構な高さを上って来たこともわかりますが、その分今度は逆にスタート地点が”消失点”に近づいていきます。
さらに100段。
200段目付近と比べても、既に結構上ってきたということがわかるところに来ているのですが、このあたりから先は、誇張抜きに割と一段一段を上ることがハードルとなってきます。
その分うれしいニュースとしては、ゴールもはっきり見えてきます。階段の上にある通路の天井が見え始めました。
ラストスパートと、とどめの階段たち
さらに100段。残りは62段ということで、
ゴールはすぐそこ、
反対に、ホーム階がほぼ消失点となっています。
そうはいっても、400段目より先は、ほぼフラフラ状態で上ることになりました(誇張抜き)。
ハァハァ息を切らしながらハンカチで汗をぬぐって上り階段を進む、途中すれ違いで下り階段を進んでいく地元の人風の人に「こんにちは」とあいさつをされ、こちらも「こんにちは」と挨拶を返すというように、ほぼノリが登山化した状態ですね。
そして、とうとうゴール!462段踏破の瞬間です。
“膝が笑う”という表現の意味するところを久しぶりに少しだけ体感出来た瞬間でもありましたが、階段を上り切った瞬間に、心なしか少しだけ疲労が回復したような気分にもなれました。
下り階段を見下ろすと、今度は完全にホーム階が消失点化しています。
なんせ直線距離にして338m、高低差約70mですからね。
上り切った瞬間にピンポン玉やスーパーボールを落としてしまったらどんな気分になるんだろう、などと恐ろしいことを考えると、それだけでひざが砕けそうな気分になってきます。「停電になった超高層ビルで最上階までの非常階段を上り切った後、地上階に鍵を忘れてしまったことを思い出した」という”怖い話”がなぜか頭をよぎったりもしましたが 笑、
ともあれ、目の前に漸く階段じゃない道が開けました。土合駅ホームにて上越線を下車して以来、約20分ぶりくらいの出来事です。
通路は、小さな川(湯檜曽川)の上に通されている、橋のような通路となっていますが、
どうやらここで”駅出口です”となるのではないようで、不穏な告知として「あと改札まで143m、階段が24段」あるとのこと。
「いや、マジで・・・?」
と、この告知にはかなり気力を削り取られそうにもなったのですが、告知云々以前に、既に扉の向こうには階段が見えています。
ならば、進むまで。ほぼ地上階にいて改札まであと少しということで、この辺りの通路は気力体力の回復ゾーンのような一帯でした。
これでもかとばかりに細かい階段の連打が続きますが、
いよいよ土合駅最後の階段へ。
486段を上り切りました。
感想としては、とにかく疲れましたという気持ちと、ほっとした気持ちが一緒になったような達成感が濃かったです。
ちょっとした登山みたいなものですね 笑。
階段回顧
計画段階から階段を上り始めるまでの間は、上り切るのにどの程度の体力を必要とするのか想像しかねる部分があったりもしましたが、正直言うと「まぁなんとなかるだろう」と高をくくっていた部分は結構ありました。
ですが実際に上ってみたところ、常日頃の運動不足が祟ったせいもあってか、軽く想像の数倍程度はキツかったです。
事前に土合駅のことを調べた時に、飛び先のブログ(動画?)で「土合の階段はとにかくゆっくり上れ」というような注意喚起を目にした記憶があるのですが、その点ひたすら同感ですね。
具体的にキツいと思い始めたのは概ね1/4~1/3位上ったあたりからで(100段目から200段目のあたりですね)、ひょっとしたらとんでもない駅で降りてしまったのでは? という気持ちがじわじわとこみ上げてきたあとで迎えた残り1/4(ざっくり、300段目付近より先)に至っては、特に足腰に来ました。
常日頃から慣れているか、あるいはきちんと運動をしていれば、恐らくは普通に登れる階段ではあると思いますが、そうでない場合、先を焦らずゆっくりペースで一段一段上っていくというペースがお勧めです。
地上階にて
通路に作られた窓からは、山小屋風に作られた土合駅の駅舎が見えています。”地上”を改めて実感した瞬間でもありました。
土合駅には、駅直結のグランピング施設である”DOAI VILLAGE”(公式サイト)が併設されているのですが、下り線ホームから続いている連絡通路沿いに出入口が用意されています。
施設利用者は、この出入口を自由に行き来できるようです。
改札へは右側へ、
背後には、
“日本一のモグラ駅”へと続く通路です。
通路を右折し、ようやく改札が見えてきました。
上越線下車後、ややゆっくりめに進みながらの、都合20分程度の”ミニ登山”のゴールの瞬間です。