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【書評/エッセイ】『男の作法』

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池波正太郎『男の作法』(新潮文庫、1984年)

昭和59年に出された、池波正太郎さんの筆による「作法問答」本です。

その一つ一つが一々板についているように見えるという、生き様に絡めて考えることが出来る作法集、みたいな一冊です。「こういう振舞いが似合う男になりたい」といったつもりで参考にしていたら、いつかカッコよくなれるかも、なんてことを期待させる雰囲気があります。

天ぷら屋、すし屋、そば屋さん等でどう振舞ったらもっともおいしくいただくことが出来るか、おしゃれをしようと思ったらどんな次元でこだわりを見せるべきか、異性を相手にした時に、「男」としてどう振舞うべきか、等々。

一つの美学の結晶というか、池波正太郎さん流の人生哲学が、ざっくばらんな雑談としてまとめられていきます。

ところで、そもそもマナーって一体なんのために存在しているのかといえば、それがプライベートで求められるものであったとしてもビジネスで求められるものであったとしても、お互いが心地よく過ごすための(時に暗黙の)ルールとして、存在していることが原則です。

その場を尊重し、あるいは相手を立てた上でやり取りしていくための、何らかの意味があるのが原則だとすると、結局のところ、マナーを通して世の中とどうかかわっていくのかという問題に収れんしていくわけです。

「男の作法」でも、池波正太郎さんの言い分はそんなところに集約されていきます。

マナーがマナーとして(ふるまいに関する知識と、自分の生きざま的な部分が)切り離されていない、自分の日常や本音に直結した話として捉えられている、その部分の個性に池波正太郎さん一流のカッコ良さが現れています。

「もっと早くこの本と出合いたかった」と思わせる本はそれでもなんだかんだ結構あったりするのですが、「男の作法」にしても然りで、自分が20代の頃にこの本に出会いたかったなぁ、なんて思いました。