まんがレビュー

【書評/まんがレビュー】『初恋症候群(シンドローム)』

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瀬戸口みづき『初恋症候群(シンドローム)』(竹書房、コミックス3巻)

ローカル女子の遠吠え」とか「めんつゆひとり飯」の瀬戸口みづきさんのラブコメ4コマです。

常にどこかに悲壮感が付いて回るような刺激というよりは、「+αとしての恋愛要素」という刺さり方が魅力で、やり取り自体に毒はあっても、暖かく入ってくる部分があります。

作中の重要な要素としては、そもそもカップルというか、好意の矢印の方向からして割と変則的である点が挙げられます。

主人公は、つい最近年上彼氏ができたヒロイン瑠璃と、その瑠璃のことが好きな幼馴染の東吾。登場人物は結構いるのですが、一応この二人が主役で、一般的な感覚から言うと、わかりやすいのはこの二人の関係のみです。

以下、まず二人の共通の幼馴染である奈緒、結構モテそうなタイプに見えるのですが、奈緒が好きなのは東吾と同じく瑠璃です。

大事なところなので二度言いますが、奈緒が好きなのは、東吾ではなく瑠璃です。

キマシタワー、の世界の恋愛事情ですね。

ちなみに奈緒には美形の弟隼人(小学生)がいるのですが、隼人が好きなのは実の姉である奈緒です。隼人の奈緒に対する思いは淡い憧れとかそういうレベルではなくて、割と強烈な思いだったりします。

同じ年の小学生女子には相当モテているようなのですが、全ての想いが姉に向かっていて、周囲に対しては独占欲をむき出しにしたりもするんですね。

だからといって姉である奈緒の手にあまるような弟なのかというと、姉に対してはその思いが見事なまでに突き抜けていきます。隼人の想いを知ってか知らずか、奈緒は実にうまく隼人をコントロールするわけです。

他特筆すべきキャラとしては、東吾や瑠璃の副担任の(現代文の)先生であるさくら先生。

普通の漫画であればとんでもなくモテるタイプの先生に見えるのですが、そこは瀬戸口みづきさん世界の漫画のキャラなので、案外そうでもなさそうに見えたりします。

モテることを感じさせる描写もなくはないですが、それでも普通にモテている程度です。ちなみにいうと、さくら先生は「ローカル女子」の水馬さんに見た目の雰囲気が若干似ている、目の保養枠みたいな先生です。

さくら先生は体育教師とのやり取りが割と面白かったりするのですが、ヒロイン瑠璃に片思いしている東吾に対して、割と果敢に上から目線で凸っていく描写がぼちぼちあります。

さくら先生側が「からかっているだけ」という感じに見える予防線を張りつつ、その中身にはガチの本気をぶっこんでいるように見えなくもないシーンの数々は、中々の見どころです。東吾の天然な対応が、天然なだけに無神経に(時に一番カッコイイ部分に)刺さっていくなんてこともあったりするためですね。

実際、最後には東吾が振られた直後に、校舎の屋上で「私を口説け」とまで言っているわけですが、読者的にはこの二人が結ばれるエンドがあったとしてもそれはそれでありだったんじゃないかと思えなくもありません。

なのですが、ここでも好意の矢印は一つとして交差せず(体育の先生→さくら先生→東吾(→瑠璃))、見事に突き抜けていくんですね。

他、東吾には兄がいて、その兄の職場の同僚がヒロイン瑠璃ちゃんの彼氏だったりするので、もちろんその部分を取り巻く人間関係も面白いんですが、「シンドローム」で一番「らしい」とか「すごい」と思ったのは、ゲストキャラ的な位置から準レギュラーキャラに昇格した島袋さんをめぐるストーリーです。

島袋さんって、ちょっとマニアックなたとえかもしれませんが、見た目も喋りの内容もニコ生主→ツイキャス主の石川典行さんに瓜二つみたいな「女子高生」です。

だからそこを知っている人であれば、島袋さんの初登場時にほぼ100%の確率で「なんやこの女子高生どこからどう見ても石川典行やんけ笑」となってしまうんじゃないかと思うのですが(実際には、特にキャラ別のモデルは存在しないようです)、この島袋さんのひねくれた異性観が、コミックスの進行と共にじわじわ変わっていくんですよ。

変わり方と共に圧巻だったのは、やはりエピローグ。サブストーリー未満のところにこういう小ネタを挟んでこれるって普通にすごい、丁寧に描かれているなぁと、ちょっと感動してしまいました。

連載中とかではなくて既に完結しているので(最終巻3巻が2016年の出版)、読みたいときに一気に読めます、という意味でもおすすめです。