西村京太郎著作選(書評)

【書評/西村京太郎著作選】北海道新幹線殺人事件(角川文庫、2019年)

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【書評/西村京太郎著作選】北海道新幹線殺人事件(角川文庫、2019年)

概要

ジャンル ミステリ
登場人物等 「ベストセラーを出しませんか」売れない作家・三浦に、出版社の社長から執筆の依頼が来る。3月26日開業の北海道新幹線を題材にしたミステリー作品を、前日までに出版したいというのだ。社長の熱心さに折れ引き受けた三浦は、無事に脱稿し、開業当日の北海道新幹線に乗り込むが、グリーン車両内で小説同様の殺人事件が起きてしまう。小説と現実が交錯する事件に十津川警部が挑む!著者の実体験をもとに書かれた渾身の長編(「BOOK」データベースより)。

あらすじ/感想

タイトルからはトラベルミステリを連想させられるのですが、時刻表トリック要素はなく、社会派ミステリ寄りの一作です。

あらすじを読んだだけでもある程度察しが付くところだろうからいいでしょうということでいうと、売れない作家を使った計画殺人がテーマとされています。

「売れない作家」自体はシロだとしても、出版社の社長は元々グレーから黒の間にいる、どうやらそういう話しになっていそうだということは割と早い段階で伝わって来るので、その意味での奇想天外感はあまりありません。

「小説に書かれた通りに殺人事件が発生する」「やたらベストセラーに拘っている出版社の社長がいる」、この二点の勢いだけで中盤過ぎまで引っ張られていく感じが無きにしも非ずです。

出版社の営業戦略があまりに突飛であることも手伝う形となって動機の部分がはぐらかされ続ける形で終盤まで進むのですが、作品の魅力というか怖さとしては、トリックそのものというよりは、殺人の動機と出版社の実態にあります。

全てが明かされていく終盤の展開には、かなりののめり込み要素があります。

世の中の闇の部分というか社会の闇の部分というか、作品はその存在を完全否定してはいるのですが、類似の組織が実在しないと言い切れるだろうか、みたいな感じですよね。

後からAmazonに付されたあらすじを読んで背筋が寒くなったのですが、どの辺までが「著者の実体験」なのかがとても気になるところでもあります。