【blog/ミステリ小説レビュー】西村京太郎『天使の傷痕』(講談社文庫、1976年)

blog

この記事を読むのに必要な時間は約 1 分13秒です。

【blog/ミステリ小説レビュー】西村京太郎『天使の傷痕』(講談社文庫、1976年)

初期西村京太郎作品の柱、社会派ミステリの代表作です。

ごくありふれた休日を謳歌していただけに見えるワンシーンが、実は全て巧妙に仕組まれた殺人計画と共に成立していたら、後からそれを知った時に果たしてどう感じるだろうかというような怖さが、「天使の傷痕」の核にある刺激です。

殺人の動機には、とある社会問題が絡んできたりもするのですが、序盤ではそのあたりの濃い事情はまるで見えてきません。

主人公である田島刑事が、休日のデート中にたまたま事件に遭遇したという体を取って物語がはじまって以降、序盤では被害者のダイイングメッセージの謎を解き進めていく形での捜査が進展し、話が深く掘られていきます。

なのですが、捜査の進展は事件の解決を近づけず、むしろ第二第三の殺人事件を誘発します。

事件発生の度に捜査本部の当初の目論見が崩されていくのですが、中盤にいたってある睡眠薬の存在が浮上したあたりから、真犯人に近づくものであるらしい分岐が発生します。

以降、序盤の展開とは違った意味でのスリリングさ(解決が近づくにつれ強まってくる、自分の恋人が事件を仕組んだのではないかという疑念)が伴うこととなるのですが、田島刑事の心中に湧いてくる嫌な予感が、少しずつ現実に近づいていくことになるんですね。

最終的には、田舎の村落の風習に絡められた社会問題が提起されるのですが、読後感は悪いものではありません。物語全編を貫く精緻なプロット立てが秀逸なので、複雑怪奇な話に安心してのめり込むことができました。

硬派なミステリを好む場合、お勧めの一冊に挙げられます。

横浜出身・在住。現在、主に横浜(みなとみらい線沿線中心)の街歩きガイド記事を書いています。鎌倉・江ノ電沿線街歩きや箱根エリアの他国内小旅行記事をはじめ、その他の話題もボチボチ。サイトへのご意見・ご感想等々は、お手数ですがPCからお願いします。

けんいちをフォローする
blogミステリ/ノンフィクション
けんいちをフォローする
みなとみらい線沿線街歩き + 小旅行&Indoor Life
タイトルとURLをコピーしました