【ブックレビュー】西村京太郎『東京ミステリー』

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【ブックレビュー】『東京ミステリー』(角川文庫、2014年)

概要

ジャンル ミステリ
登場人物等 江戸川区内の交番に勤務する山中のモットーは、地元の住民と仲良くすること。アパートに住む一人暮らしの老女が、大家とトラブルを起こし、追い出されそうになってしまう。見るに見かねた山中は、妻の勧めで箱根の別荘を購入し、気になっている5名の人たちを住まわせる。別荘に移った後、1人の住人が失踪。さらにもう1人いなくなり…。東京と箱根にまたがる捜査が開始され、十津川警部は、事件を追って箱根に向かう!(「BOOK」データベースより)

あらすじ/感想

トラベルミステリではなく、社会派ミステリっぽい作品です。

古き良き時代の「いいお巡りさん」という感じの交番勤務の巡査長が、地域警邏の傍らで職務上気になっていた5人の住人達と突っ込んだ関わりを持つことになるところから、物語が始まります。

この5人の関係はまるで接点が無さそうに見えるもので、かつ、それぞれの人物設定にしても、いかにも今の時代にいそうな人たちだったりするので「ああ、なるほど」といった感じで、常日頃目にするニュースなどを連想させられたりもします。

希薄な人間関係がもたらす、人と人とのつながりの薄さ、そのあたりの事情をベースにしているのかな、といったところですか。

すぐ隣に住む住人が、常日頃どこで何をしている人なのか全く分からないなんて、今日日借家住まいなら普通にあることですからね。

昔気質のお巡りさんが、そんな5人の住人達の世話を焼き、面倒を見るという話として物語が進めば、やはりどうしても「5人の物語がそれぞれ単体で進んでいくことになるんだろうな」という一定のイメージが出来上がることになります。

ですがそのあたりの読者の心象を手のひらの上に載せて眺めているかのように、いい意味でそれをガッツリ裏切っていく方向に、話しは進んでいきます。

ネタバレにならない程度に展開を言ってしまうと、人間関係は希薄とは対極にある、しかも熱い情でつながっていたりもするのですが、個々をつなげる熱い情が、これまた今の世の中に普通にありそうな問題を介していたりもしました。

勧善懲悪要素が満たされた後の、ラストシーンのほのぼの感も良かったです。あまり殺伐としていない、どこかのんびりしたミステリを欲する時にお勧めです。

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