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【書評/鉄道旅行】宮脇俊三『鉄道旅行のたのしみ』

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宮脇俊三『鉄道旅行のたのしみ』(2008年、角川文庫)

概要

ジャンル 全国各地の鉄道乗車記。
テーマ 鉄道と、それにまつわる世界の魅力について。

 

あらすじ/感想

文庫版の出版は2008年=平成20年ですが、元原稿は昭和50年代末に上梓されているので、内容としては国鉄時代の最末期の様子がまとめられた一冊です。

著者が一流の紀行作家、特に「鉄道ライター」の第一人者であることもあってか、行間から古き良き時代の鉄道旅の香りがあふれてくるような風情があります。

とはいっても、作中に使われている一つ一つの言葉(ex.汽車、電車、鉄道、時刻、ダイヤ、未知の地名・駅名等々)を凝視しても、多くの場合は特に何も浮かんできません。

にもかかわらずそれらの言葉を組み合わせて文章にした時、その言葉と言葉のつなぎ合わせを滑るように読み進めていったときに浮かんでくる、鮮やかな情景。

そのあたりが、やはり良質の鉄道紀行文の魅力なのでしょう。

鉄道が国有され、一括統治されていた時代の話しなので、北海道の路線だろうが九州の路線だろうが国鉄は国鉄、地元の私鉄ではないという一本の目線で、均等に全国の路線が語られます。

個性豊かな日本全国の路線がどこか平板に語られているように見えなくもない部分こそ、国鉄時代の鉄道の魅力だったりするのかな、なんて素人目線からだと見えたりします。

私鉄についても語られていますが、分量的にかなりのパートを占めるのが国鉄です。

著者としては私鉄の方が好きだという部分もあるようですが、それは私鉄とかつての国鉄を比べた場合の、それぞれのサービスや「鉄道」に対する思いに起因しているようです。

国鉄私鉄の各鉄道路線の他、駅についても触れられています。

番組改編期とか年末なんかに放送されてそうな警察ドキュメント、あの手の番組にはつきものとなっている「名物交番の一日」的な話の「駅」バージョンは、結構面白い話しだったりします。

ただしここは旅行の楽しみというより、どちらかというと日常風景描写に近いパートですね。ここでも日本全国の主要拠点の駅が取り上げられることによって、総体が旅情を醸します。

取り上げられた駅が日常生活圏内にあるような場合にはどうにも旅情が感じられなかったとしても、「駅」の風景をいくつか並べられることによってあたかも旅をしているような気分になってくる、旅番組のワンシーンを見ているかのような気分になってきます。

総じて、純粋な旅行+タイムトラベル的な要素もあるという、旅情に満ちた一冊です。