青春18きっぷと日本海の夕日
“ひすい”と日本海ひすいライン
奈良井駅から松本駅へ、松本駅からはリゾートビューふるさとに乗って、南小谷駅まで。
南小谷駅界隈での昼食後に、引き続き大糸線(今度は各駅停車)で糸魚川駅まで。
この行程で山間部を抜けた後、糸魚川駅からは元・JR西日本の北陸本線、現・官民共同出資(第三セクター)の地方鉄道である日本海ひすいラインに乗車しました。
参考
- 【青春18きっぷの旅/二日目】”リゾートビューふるさと”で松本から南小谷へ
- 【青春18きっぷの旅/二日目】高地・山間部を走る大糸線で南小谷駅から糸魚川駅まで
- えちごトキめき鉄道 “日本海ひすいライン“
about 日本海ひすいライン
日本海ひすいラインは、かつてJR西日本の管轄下で、北陸本線として営業されていた路線です。
北陸新幹線開業に伴ってJR西日本から経営分離された後に、2015年に官民共同出資の第三セクター鉄道(以下、三セク鉄道)として、市振駅・直江津駅間が新規開業しました。
現在は妙高はねうまライン(旧JR東日本・信越本線)と共に、えちごトキめき鉄道が運営しています。
“旧・JR”の三セク鉄道だということで、ターミナル駅にあたる糸魚川駅でもホームや改札は特にJR大糸線と分離されていないのですが(直江津駅でも同様)、現在はあくまで三セク鉄道であってJRの路線ではないため、”日本海ひすいライン”区間では青春18きっぷが使えない点には注意が必要です。
参考
ひすいラインの”ひすい”と、大昔の日本
日本海ひすいラインの名に使われた“ひすい(=翡翠)”とは、新潟県・長野県を流れる姫川流域の特産品である、緑色(半透明)の天然石のことです。
今を遡ること約5億2千万年前に出来た、”現生人類(特に日本人の祖先)との付き合い”ということでは縄文時代(早期~中期)以来の姫川流域の特産品で、古来より勾玉などに加工され使用されてきました。
同じく有史以前から石器に加工して使われていたサヌカイト(香川の他、大阪・奈良が産地です)や黒曜石(産地は全国に点在しています)などと共に、“産地以外の場所でも使用されていた”点にもその特異性が見いだされています。
ちなみにひすいの分布はほぼ東日本全域、サヌカイトの分布は西日本の産地周辺(産地である大阪・奈良・香川の他、瀬戸内や北九州地方など)、”ひすい”や”サヌカイト”より産地の多い黒曜石の分布は日本全国で、それぞれ確認されています。
以下は、余談として。
“産地以外での黒曜石やヒスイ、サヌカイトの分布”から明らかとなるのは、後に律令制下で五畿七道が整備される以前から、特に本州・東日本エリアにおいて物流が広く発達していた様子ですが、“先史時代(この場合は特に縄文時代)の物流の発達”を前提とした場合。
“縄文文化”のあり方などとも相俟って、時の東日本には既に高度な文明が存在していたのではないかという、どこか夢のある(なおかつ、蓋然性の高い)仮説が成立する余地が出てくることになるのですが、この仮説は時に”記紀”の世界(=古事記・日本書紀が語る、神話の世界)と結びついて展開する場合も、あるにはあるようです。
こういう”仮説”と抜群の相性を誇るのが、例えば鹿島神宮、香取神宮といった、神話の世界(=出雲の国譲り神話)とのかかわりを持ち、なおかつ日本国内でも有数の歴史を誇るという、由緒正しい東日本の古社の存在です。
同様の仮説は、例えばサヌカイトが広く分布していたという瀬戸内地方などに対しても成立するのかもしれませんが、ともあれ。
文字が語らない歴史を遺跡に残された天然石が雄弁に語る、というのも、それはそれでなんともロマンチックな話ではありますね。
参考
- Google画像検索 “ひすい“”黒曜石“”サヌカイト“
- 糸魚川観光物産センター公式サイト
- 国土交通省 北陸の一級河川 “姫川“
- 【旧街道と宿場町】街道整備と江戸時代の旅(五畿七道、五街道、脇街道)
- 鹿島神宮公式サイト
- 香取神宮公式サイト
日本海ひすいライン乗車
大糸線から”ひすいライン”へ
糸魚川駅に着く直前(姫川駅ー糸魚川駅間)から、電車(大糸線)は日本海沿いを走りはじめます。もちろん(?)、本番は大糸線の終点・糸魚川駅でひすいラインに乗りかえてからなのですが、その少し手前にあたる姫川-糸魚川間(大糸線)で既にそれと感じさせる車窓風景があったような記憶もまた、無きにしも非ず。
大糸線(上地図の緑線)が内陸部(長野県松本市)からひたすら北上してきた路線だとすると、旧北陸本線の”ひすいライン”は、市振駅(新潟県最西部)から直江津駅に向けて、延々日本海沿いを東進する路線(上地図青線)です。
この2路線が、糸魚川駅にて合流する形ですね。
北越急行ほくほく線とのコラボ
ということで、糸魚川駅では大糸線からの短い接続時間の中、
下校時刻を迎えたと思しき地元高校生に囲まれながら、早速ひすいラインへ。
車体のカッコイイペイントでは、よく見ると、北越急行ほくほく線とのコラボイベントがプロモーションされています。実際、”北越急行×えちごトキめき鉄道”というコラボは記念乗車券販売などと言った形でしばしば(?)行われている上、二社の間には統合案も存在するようです。
ちなみに”ほくほく線”もまた新潟県内の第三セクター鉄道で、新潟の山間部を通る直江津駅ー越後湯沢駅間で運営されていますが、余談として三セク鉄道の接続事情と旧北陸本線・旧信越本線の関係については、別記事(※)にまとめました。
参考
- えちごトキめき鉄道公式サイト “日本海ひすいライン沿線ガイド“
- 北越急行ほくほく線公式サイト
- 【上信越青春18きっぷの旅】”三セク鉄道”区間と旧信越本線、旧北陸本線(※)
日本海へ -“ひすいライン”からのオーシャンビュー-
糸魚川駅を出発したひすいラインは、ほどなく日本海の海岸線沿いにルートを取ります。
大糸線からの乗り換えであれば”ほどなく”、市振方面からの継続乗車であれば”引き続き”、車窓から手の届きそうな位置にある堤防や砂浜、テトラポット、さらにその向こうで水平線の彼方まで続く日本海を真横に眺めながら、一路直江津駅へ。
首都圏であれば江ノ電の鎌倉高校前駅付近、あるいは東海道線の国府津駅・根府川駅付近等々と同種の風情を感じさせる沿線風景ですが、砂浜との距離でいえば、間に国道134号線や1号線/135号線等々を含む江ノ電あるいは東海道線沿線駅より、僅差でひすいラインの方が近いようにも感じます。
“どちらも一様に”というとらえ方が相応しそうなその比較に対して、もう少し決定的な要素としては、朝日が綺麗な太平洋岸に対して、日本海岸は夕日が綺麗なんですよね。
夏の日はまだまだ高いとはいえ、ボチボチそれを待ち望める時間帯へと差し掛かり始めました。
ひすいラインも国道(8号線)との並走区間を持っていたので、この日の最終目的地である新潟駅までのおよその距離も、車窓から確認することが出来ました。
あと約140キロ・・・。
駅間距離を計測したところ、この日の出発駅であった奈良井駅から、つい先ほど通過した糸魚川駅までの距離がおよそ140キロだ(※)ということで、偶然にもこの辺りが丁度折り返し地点にあたるようです。
確かに、地図をパッと見た感じからもそういう雰囲気が伝わって来ますが、盛沢山だった”前半戦”である大糸線区間の後で乗車したひすいラインの乗車時間は、糸魚川駅-直江津駅間でおよそ40分程度でした。
今にして思えば、40分も乗車していたらわりと乗ってる方じゃないかという気もするのですが、乗車時にそんなことを感じた記憶は微塵もありませんでした。
これぞまさに18きっぷ旅、ですね 笑。
そんなこんなで糸魚川駅の次の目的地はひすいラインの終点・直江津駅。
直江津駅の次の目的地は、この日の最終目的地である新潟駅です。
参考
“ひすいライン”終点、直江津駅にて
“ETR“とは、Echigo Tokimeki Railway(ひすいラインの運営会社である、えちごトキめき鉄道)のことですが、直江津駅は、今回の18きっぷ旅ではひすいラインの終着駅です。
降りたホームにはお菓子の自販機があり、
駅のコンビニ傍には、特産品・名産品の展示コーナーがありました。
実際駅に降り立ってみると、地元の人たちの生活拠点感に勝るとも劣らない”観光拠点”感が、そのまま駅の個性になっているようにも伝わります。
このオブジェは、直江津駅が、上越妙高駅ー十日町駅間を走るイベント列車“越乃Shu*Kura”の停車駅であることを意味しています。”越乃Shu*Kura”は、土日を中心として「お酒を楽しむ」というコンセプトに基づいて運行されているイベント列車で、越乃=越後、Shu=酒、Kura=蔵、*=米、雪、花を意味しています。
直江津駅はまた、北越急行のほくほく線の始発駅でもあるので、同じホームにはほくほく線の電車が止まっています(ちなみに左側がほくほく線です)。
丁度地元中高生の下校時間に被ったことからか、観光地の駅でありながらぼちぼち生活感をも感じさせるという雰囲気に包まれていたのが、夕暮れ時の直江津駅ホームでした。
のんびり、かつ程好い活気と共にあった雰囲気は、とても心地良かったです。
しばし直江津駅のホームでの時間を過ごしたのち、この日の最終目的地である新潟駅へ向けての、信越本線の旅が始まりました。
参考
信越本線区間へ
夕暮れ時の日本海を臨む車窓風景
信越本線・直江津駅発後。しばらくは「海沿いを走っていること」がやや分かりにくい区間が続くのですが、やがてひすいライン顔負けのオーシャンビュー路線となります。
JR信越本線・柿崎駅から先、およそ鯨波駅までの区間ですね。
砂浜がすぐ横にある区間では、距離感ゼロの車窓風景が楽しめるのですが、
中でも特に青海川駅-鯨波駅間は、ほぼ真隣が日本海です。
ひすいラインの沿線にもオーシャンビュー路線がありましたが、信越本線の笠島駅から鯨波駅にかけての区間は、18きっぷ旅のおすすめ路線の一つです。
追記:この18きっぷ旅の約一年後、今度はドライブでこの海岸線を走る機会に恵まれました(※)。
参考
長岡から新潟へ
直江津駅での乗車時点ですでに夕方だったため、信越本線の乗換駅である長岡駅までの乗車で日本海側の夕日は落ち、以降は夜間の車窓風景となりました。
信越本線の乗り換え駅だった長岡駅についたのは19時過ぎ。
今回はわずかに滞在したのち、さらに新潟駅を目指しました。
電車内では本を読んだりスマホをいじったりという時間を過ごしたのち、20時40分新潟駅着。
早朝の奈良井駅発後、途中松本駅、南小谷駅等々を経由しつつ、都合12時間がかりの道中でした。
参考