人類の誕生と地質年代
“人類”の位置づけ
生物学上の定義と、最古の人類
分類階級 | 概要 |
動物界 | 植物や菌類ではなく、動物である |
脊椎動物門 | 動物の中でも脊椎(≒背骨)を持つ動物である(※1) |
哺乳網 | 母乳で子育てする動物である |
霊長目 | 哺乳類の中でも脳や視覚が発達し、手先が器用な動物である |
ヒト科 | 人間のほか、オランウータン、ゴリラ、チンパンジー等々 |
ヒト(ホモ)属 | 現生人類と、その祖先にあたる生物である(※2) |
ホモサピエンス(種) | 現生人類 |
生物学上の分類では、現生人類は”動物界/脊椎動物門/哺乳網/霊長目/ヒト科/ヒト属/ホモサピエンス“というカテゴリに区分されます。
単に”ヒト属”と言った場合、いわゆる”化石人類”と呼ばれる現存しない人類の祖先も現生人類の同属に含まれることになりますが、
2025年現在地球上最古の人類=ヒト属最古の先祖であると考えられているのは、今から約700万年ほど前にアフリカ大陸の中央部に位置する国・チャドにあたる地域で活動していたと思われる、サヘラントロプス・チャデンシスです。
今から600~760万年前、サヘラントロプスの持つ特徴である“犬歯の縮小”が確認され、かつ“直立二足歩行”をしていたと考えられる点を以て、人類の祖先はチンパンジーとの共通祖先から別の生物に分岐したと判断された、すなわち最古の人類はサヘラントロプスだと考えられているんですね。
とはいえ、目下のところこの説には異論もあるにはあるようです。
サヘラントロプスが本当に現生人類の最古の祖先にあたるのかを判断するにあたり、“直立で”二足歩行をしていたのかという点が疑問視されているということで、2025年現在は「そうだと思われる」あるいは「その可能性がある」という“諸説あり”の次元にとどまっています。
- ※1:クラゲは脊椎を持ちません
- ※2:”旧石器時代”の主役である、いわゆる化石人類を含みます
- 外務省公式サイト “チャド共和国“
最古の人類と、”共通祖先”を持つ生物
サヘラントロプスをはじめとする”化石人類”、及び巡り巡って我々現生人類は、オランウータンやチンパンジーとの間に共通の祖先をもっています。
ちなみにオランウータン(インドネシア語などで”森の人”を意味します)と人類は、今から約1500万年前に共通の祖先から分離したと考えられています。
かつてはラマピテクスやシバピテクスといった、現在は類人猿(ヒトに近い猿)だと考えられている生物が猿人類(最初期の人類)だと考えられていた時期もあったということですが、現在この説は修正され、双方ともオランウータンの始祖にあたるとされています。
ラマピテクス・シバピテクスは双方とも、パキスタンやトルコのアナトリアにて、約1400万年前の活動が確認されています。
参考
化石人類とチンパンジーの距離感
オランウータンと比べると人類により近いところにいるともいえる、チンパンジーについて。
前記したように、チンパンジーは今から760万~600万年前に人類との共通祖先から分離したと考えられていますが、双方の距離感を捉える上での一つの目安として、人類の祖先とチンパンジーの祖先の間の異種交雑については、あったとする説となかったとする説、諸説が入り混じった「まだまだ研究の余地がある」という状態にあるようです。
これに対して化石人類相互間、さらには現生人類の祖先と化石人類間の異種交雑については、最先端のゲノム解析技術を用いて「あった」ことの科学的な証拠も挙げられているようです(※ほか)。
人類の祖先とチンパンジーの祖先相互間には、同じ霊長目ヒト科ではあっても、それぞれがお互いに対して持つ根本的な違和感があったのだろう(ただし全くの別物意識が双方でなされていたのかというと、必ずしもそうではなかったのかもしれず)と考えられることに対して、現生人類と化石人類(=いわゆる新人)の場合については、種としては違っても同属ではあることからか、違いが気にならない程度の”似たもの”同士だと判断される場合も多々あったのかもしれません。
微妙な違いといえば微妙な違いなのかもしれませんが、異属・同属であることが無意識のうちに理解されていたような、そうでもないようなという程度の距離が、既にそこにあったようにも見えてきます。
余談として、現生人類と同種にあたると判断される”新人”(ホモ・サピエンス)ですが、例えば周口店上洞人やクロマニョン人など、特定地域で特徴的な文化を残したとされる”化石人類”については、いずれも絶滅したと考えられています。
「新人の生き残り」が現生人類である、という形ですね。
参考
- 国立研究開発法人産業技術総合研究所 “全ゲノム配列を用いてヒトの進化を再構築“
- 研究開発戦略センター “「人類の進化というロマン」“(※)
- ナショナル ジオグラフィック “ネアンデルタール人は異種交配で絶滅?“
地質年代による区分
人類の歴史と地球の歴史
繰り返しになりますが、2025年現在、人類の時代は約700万年位前に始まったと推定されています。
さらに“現生人類と同種の人類”(現存しない化石人類含む、ホモ・サピエンス)は約20万年前から地球上での活動を開始した後、言語の使用は約10万年くらい前から、文字の使用は約5000年ほど前からそれぞれはじまったと考えられていますが、一方で地球はそれよりはるか昔、約46億年前に誕生したと考えられています。
人類・地球双方の間には、文字通りけた違いのギャップが存在しているんですね。
地球誕生以来46億年の時間の中で、人類が約700万年前に地球上に初登場してからの経過時間が占める割合はわずか0.1%、”現生人類の直接の祖先登場”であれば0.004%、”言語の使用”以来の時間に至っては0.0001%を占めるに過ぎません。
地球の誕生から今現在までの長さを一日に置き換えた場合、“人類の時代”は86秒、現生人類の祖先(=化石人類である新人)の登場以来の時間や、言語の使用期間については、共に1秒未満です。
以上のことから、人類が文字を使用する以前の”過去”については、第一には“地質年代”という“化石のありかた”から地球の歩みを教えてもらう方法が有効な手段とされ、文字記録以前の人類の祖先たちの姿については、当時を生きた”祖先”達の生活痕(遺跡の態様)を手掛かりとする形で推定されます。
いずれも、現在のところ他に有効な手段が見当たらないためですね。
参考
地質年代による区分
時期 | 地質年代 | 主要な出来事/区分 |
46億年前~5億4100年前 | 先カンブリア時代 | 内部にも細かい区分あり |
5億4100万年前~ | 古生代(顕生代) | 魚類の登場 |
2億5200万年前~ | 中生代(顕生代) | 恐竜の全盛期 |
6600万年前~ | 新生代(顕生代) | 恐竜絶滅後、哺乳類の全盛期 古第三紀:6600万年前~ 新第三紀:2300万年前~(後述) 第四紀:260万年前~(後述) |
地球46億年の時間の中でその大半を占めるのは、誕生以来約40億年に渡って地球の原型が形成された時代ですが、地球最古の生命が誕生し、海が出来、プレート活動が始まりetcといった”40億年”は先カンブリア時代と呼ばれます(先カンブリア時代内部には、さらに細かい区分が存在します)。
この時代に続き今に至るという約6億年弱の期間が、地球上にて多種多様な生物が主役となって行く顕生代と呼ばれる時代です。
古生代・中生代・新生代と大きく三区分される顕生代の中でも、特に今に続く一番新しい時代である”新生代”は、約6600万年前に始まりました。
新生代 -古第三紀・新第三紀・第四紀-
時期 | 地質年代 | 人類の態様/主要な出来事 |
約2300万年前 ~530万年前 |
中新世(新第三紀) | 人類の起源(猿人)誕生(約700万年前) |
約530万年前 ~260万年前 |
鮮新世(新第三紀) | 猿人の時代 |
約260万年前 ~12000年前 |
更新世(第四紀) | 猿人・原人・旧人・新人が共存した時代 旧石器時代(約250万年前~約1万2千年頃) 新石器(縄文)時代のはじまり (約16000年前~2700年前、※2) |
約12000年前~ | 完新世(第四紀) | 氷河時代の終わり/日本列島の形成 縄文(新石器)時代:~約2700年前 弥生時代:約2700年前~西暦250年頃 |
新生代は、内部でさらに”古第三紀・新第三紀・第四紀“と三区分されます(上表では、古第三紀は省略しました)。
数字がいきなり『三』から始まっているのは、かつてそれほど地質学の研究が進んでいなかった頃に古生代=第一紀、中生代=第二紀、それに続く新生代が第三紀とされていたことの名残に依っています。
人類の活動が始まった新第三紀は、内部でさらに中新世・鮮新世に区分されます。
- 中新世は地殻変動が激しくかつ温暖化が進んだといわれる時代です
- 鮮新世は比較的温暖な気候が続いた後末期に寒冷化が進んだ時代です
現在に続く時代区分である第四紀は260万年前から始まり、内部でさらに更新世・完新世に区分されますが、ここで人類にとっての”石器時代”が始まります。
- 更新世は氷期と間氷期が繰り返された氷河時代です
- 旧石器時代は、ほぼ更新世の全期間にわたります
- 完新世は氷河時代が終わり温暖化が進んだ間氷期に該当します
- 新石器(縄文)時代は、更新世末期に始まり完新世に至る約1万年間に該当します
改めて、これら全ての時代区分は、直接的には地層の分析から明らかとなる化石のありかたが根拠となっていますが、これは目下のところその時代を判断するに足る”他の手がかり”が存在しないためです。
参考