青春18きっぷと三セク鉄道-東北エリア-
旧東北本線と三セク鉄道
東北本線敷設・全通へ
首都圏発で東北地方を縦断する旧東北本線の敷設は、北海道開拓を見据えた高島嘉右衛門らの建言による日本鉄道設立に始まります(マップは東北新幹線ルートです。青春18きっぷで東北新幹線乗車はできません)。
官営ではなく私鉄、ただし政府の支援も受けていたという、今でいう三セク鉄道としてのスタートですね。
建言が明治5(1872)年、日本鉄道の設立は明治14(1881)年です。
日本鉄道設立の翌年、明治15年に敷設が着工すると、以降足掛け10年がかりで明治24(1891)年に上野駅ー青森駅間が全線開通しました。
当時は片道所要時間が26時間25分、なんと1日以上の行程で、かつ一日一往復のみの運行でした。
現在の事情と照らし合わせれば海外への渡航以上の遠出感がありますが、日本鉄道全線開通以前には徒歩で20日程度、馬車でも12日かかっていた行路であったことから、鉄道史、交通インフラ史的には「革命」レベルの出来事であり、開通当日の青森駅の賑わいも相当なものだったようです(※)。
工区には難所が含まれていたほか、当時の東北地方にはオオカミが出没する地域もあり、人身(獣害)事故があったとの噂もあったようですが、敷設工事自体は概ね順調に進んだ旨の記録が残されています(※2)。
元々は私鉄、というよりは「三セク鉄道」として始まったかつての日本鉄道は、明治39(1906)年に国有化され、逓信省鉄道局の管轄下に置かれたのち、鉄道院管轄時代の明治42(1909)年に東北本線となり、大正14(1925)年には起点が上野駅から東京駅へ移されました。
余談として、東北本線敷設を建言した高島嘉右衛門さんは占いの高島易断創始者であり、横浜港の開拓事業や開港期の横浜での事業展開などの実績によって、今も横浜市内の地名・駅名にその名を残しています(西区の高島町、みなとみらい線の新高島駅など)。
参考
- 日本民営鉄道協会 “最も古い民営鉄道って、どこの会社ですか?また、初めての路線はどこですか?“
- 青森県公式サイト “青森県史の窓 陸上交通の革命“(※)
- 鹿島建設株式会社公式サイト “鉄道開業150年 さまざまな峠越え、谷越え“(※2)
- JTB時刻表100周年 “鉄道史と時刻表100年の歩み“
- 【鉄道旅とお得きっぷ/旧北陸本線】北陸エリアの三セク鉄道と青春18きっぷ
- まっぷる “青い森鉄道のモトとなった東北本線の歴史“
- 高島易断公式サイト “高島易断について“
- みなとみらい線 新高島駅 -駅基本情報、ロケーション、交通案内-
東北新幹線の開業と東北本線の解体、三セク鉄道の開業
時は流れて平成中期。
平成14(2002)年、すでに盛岡駅まで開通していた東北新幹線が八戸駅まで延伸され、さらに平成22(2010)年には八戸駅から新青森駅までの区間が開通します。
この動きに合わせる形で、
| 年月日 | 新規開通区間 | 三セク鉄道名 |
| 2002年12月1日 | 盛岡駅ー目時駅 | IGRいわて銀河鉄道 |
| 目時駅ー八戸駅 | 青い森鉄道 | |
| 2010年12月4日 | 八戸駅ー青森駅 | 青い森鉄道 |
以上の2つの三セク鉄道、IGRいわて銀河鉄道と青い森鉄道が新規に開業しました。
結果、盛岡駅ー目時駅ー八戸駅ー青森駅の区間はJR東日本から経営分離され、東北本線の北限は2010年以降盛岡駅となったのですが、青春18きっぷの利用可能区間についても同時に変化しています。
青春18きっぷと東北地方の三セク鉄道
現在も東京駅ー盛岡駅間は東北本線で繋がれているため、青春18きっぷは全区間で利用可能です(マップは東北新幹線ルートです。青春18きっぷで東北新幹線乗車はできません)。
ただし盛岡駅ー青森駅間では三セク鉄道(青い森鉄道)を使わないと進めないJRの路線が出てきてしまったことや、乗車時の利便性が考慮された結果、青森県内に複数の特例区間が設定されています。
参考
青い森鉄道と青春18きっぷ
| 区間 | 路線名/鉄道会社 | 特例条件 |
| 青森駅ー八戸駅 | 青い森鉄道 | 青春18きっぷ利用可 |
| 新青森駅ー青森駅 | JR奥羽本線 | 青春18きっぷで特急乗車可 |
青い森鉄道の青森ー八戸間は孤立区間との接続のため、奥羽本線の青森ー新青森館は接続の利便性が考慮されたことから、それぞれ特例が認められる形となっていますが、このうち前者については
- JR奥羽本線・津軽線との乗り継ぎのための青森駅乗り換え
- JR大湊線への乗り継ぎのための野辺地駅乗り換え
- JR八戸線への乗り継ぎのための八戸駅乗り換え
以上の場合に限って、青春18きっぷでの乗車が認められています。
逆にいうと、青い森鉄道では原則として青春18きっぷは利用できない、ということですね。
IGRいわて銀河鉄道と青春18きっぷ
東北新幹線開通によって開業したもう一つの路線であるIGRいわて銀河鉄道には、「IGRいわて銀河鉄道を利用しないと利用できないJRの路線がない」ことから、全線で18きっぷの利用ができません。
お得きっぷ・公式サイトリンク集
青い森鉄道、IGRいわて銀河鉄道では、いずれも全線のフリー乗車券が発売されているほか、両鉄道共通のフリー切符(もりもりフリーパスほか)、沿線の観光施設と連動した企画きっぷなども多数販売されています。
フリー切符については土日祝日の利用が中心に考えられているため、必ずしも青春18きっぷの利用期間に準拠していない点には注意が必要です。
年末年始の他、お盆期間などで「利用期間が被ることもある」くらいの感覚で捉えた上で、利用の可否を前もって確認してからのプラン作成がおすすめです。

