星の王子さまミュージアムへ
about 星の王子さまミュージアム
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初詣後に大涌谷を見た後は、仙石原にある星の王子さまミュージアムへと向かいました。
星の王子さまミュージアムは、箱根の仙石原にある、フランス人作家・サンテグジュペリ著「星の王子さま」の世界が体現されたミュージアムです。
その名の通り「星の王子さま」をテーマとした美術館なので、第一に作品のファン向けであることは確かなのですが、仮に元々はサンテグジュペリやその著作のファンでなかったとしても、その場の雰囲気を味わえる、来訪を楽しめるミュージアムになっています。
常設展示では著者・サンテグジュペリの生涯も丁寧に追ってくれているので、「こういう世界を生きてきた作家さんは、一体どんな話を書くのだろうか」といった興味の持ち方をすることも可能なんですね。
ということで、どこか「箱根にはピッタリ」を感じさせてくれる美術館でもありそうです。
参考
- 美術手帳 “20年以上の歴史に幕。「星の王子さまミュージアム」を振り返る“
- 【2019日帰りドライブ/ちょっと遅めの初詣と箱根 1】箱根神社
- 【2019日帰りドライブ/ちょっと遅めの初詣と箱根 2】芦ノ湖と大涌谷
2024年6月追記
注:星の王子さまミュージアムは、2023年3月31日をもって閉館となりました。
以下は、2019年訪問時の訪問記です。
星の王子さまミュージアムへ
ミュージアムの入り口です。
中に入ると、中央には”星の王子さま”、背景にはおしゃれっぽい建物がありますが、この建物は映像ホールで、ホール前の庭はバラの庭園=ローズガーデンです。
すぐそばには箱根の山々、その手前に見える建物がレストランとミュージアムショップです。
レストランやミュージアムショップの前にもローズガーデンとは別の庭園があるのですが、双方(それぞれ、これから見る人用、展示等を見終わった人用のスペース)は壁で仕切られています。
順路は、ミュージアム名物であるフォトジェニックスポットへと続きます。
その名も”王さま通り”です。
あくまで作られた街並みなのですが、初回訪問時は、まずはこの付近の雰囲気に気分を持っていかれます。
ミュージアムへの入り口は右端です。ここからが本番ですね。
『星の王子さま』
展示では、星の王子さまのみの世界というよりは、サンテグジュペリの世界そのものが表現されています。
どこか「西欧+ファンタジー」風に作られた”街並み”の中を少し歩いた後で、サン=テグジュペリ『星の王子さま』ワールド(常設展示エリア)へと進むのですが、ここで少々『星の王子さま』について。
『星の王子さま』は、パイロットである「ぼく」がサハラ砂漠不時着後にほどなくして出会った「王子さま」との「星巡り」中の掛け合いが柱となった作品ですが、作中の「王子さま」は、「ぼく」の心の奥深くに眠っていた「かつてのぼく」そのものを担っています。
「星巡り」は、端的に言えば「主人公の思い出巡り」と言い換えることが出来るものです。
主人公のサハラ砂漠への不時着後に「突如として実体化した童心」こそが「王子さま」そのものなのですが、「誰もが一度は通ってきたであろう世界」の住人である「王子さま」が、既に大人となった主人公の前に登場したことから、物語が始まります。
幼い子供にとっての等身大の世界を生きる「王子さま」は、「(かつての)ぼく」にとって自分にしかわからなかったはずのことをわかってくれるような感性を持っていたり、世間一般の大人をどこか斜な目で見ていたり、世を達観したようなつぶやきをしてみたりと、作中において大なり小なり「(現在の)ぼく」の意表を突きながらキャラを立てていきます。
「王子さま」=「かつてのぼく」と、成長した分スレてしまった「現在のぼく」の違いは、サハラ砂漠のど真ん中に不時着したというシビアな現実の中でソフトに絡み合いながら、最終的には「ぼく」にとって一番大切にすべきことってどんなことなんだろう、といった話に収れんしていきます。
ミュージアムの住人たち
ミュージアム内の撮影許可ゾーンで待っていてくれる人たちは、王子さまの星を巡る旅に出てくる「星の住人」達ですが、誰も彼もキャラの濃い人たちばかりです。
作中の王子さまは、この人たちのことごとくを斜な目で見ていくことになるので、この人たちは王子さまがキャラを立てていく上での「かませ」みたいな人たちでもあります。
決して悪い人たちではなく、この人たちはこの人たちで時代に翻弄されていた人たちだったりするのですが、以下、若干ネタバレ含み・私見含みの記事です。
『星の王子さま』のクライマックス(ネタバレあり)
大人向け童話の古典である星の王子さまの名作たる所以は、サハラ砂漠に不時着したパイロットである「ぼく」の生還に歩みを合わせるかのようにして、「王子さま」が消えてしまうところにあります。
作中の柱となる「ぼく」と「王子さま」の掛け合いは、たとえて言うならリアルな死を目の前にした人の頭に走馬燈が巡ったような話だともいえますが、作中の「ばく」は、不時着したサハラ砂漠のど真ん中でリアルな死と向かい合うことによって、幸か不幸かそのような走馬燈を見ることになりました。
“走馬燈”の全ては、作中のラストで、「王子さま」と出会った場所である夜のサハラ砂漠のど真ん中の景色に置き換えられ、この風景を見たときに僕は王子さまとの不思議な体験の全てを思い出す、というエンドにつながります。
かつての僕はもういないけど、確かにそこにかつてのぼく=作中表現でいう「王子さま」はいたのだというような、どこか切なく淡い気持ちが読後に余韻として残されるんですね。
一番大切なものは人としての温かみ、思いやり、目に見えない気持ちだという「王子さま」の感性に「ぼく」も共鳴するのですが、その場合の”共鳴”には、先を急ぎすぎて目標を見失ってしまっては生きていく意味すら曖昧になってしまう、なんて感じのニュアンスも含まれています。
王子様との星めぐりが見せた美しい風景は「ぼく」にとってはこのようなもの(作中世界そのもの)だった、それでは、あなたがた読者諸氏にとっての一番大切な風景とは? という普遍的なノスタルジーへ結びついていくエンディングの妙味こそ、『星の王子さま』最大の魅力です。
レストラン Le Petit Prince(ル・プチ・プランス)
ミュージアムを一通り見終わって出てくると、経路はミュージアムショップやカフェ・レストランへと続きます。
丁度いい感じの時間だったので、ランチもミュージアムのレストランでいただきました。
メニューにも雰囲気がありますが、心なしかランチそのものもどこか「星の王子さま」風ですねなどと思っていたら、
『星の王子さま』作中中盤でラストの展開へのフラグを立て、そして実際その回収に来たという「黄色い蛇」のパスタが登場しました。
味の方も確かで、とてもおいしかったです。