【街歩き雑学/街歩きと自然科学】群馬・新潟県境エリアの自然環境

2018夏 小旅行ドライブto新潟

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【街歩き雑学/街歩きと自然科学】群馬・新潟県境エリアの自然環境

2018年の新潟へのドライブ旅記事、”【blog/旧街道と宿場町】群馬・新潟県境エリアの道路状況“から、以下の記事を分離しました。

点線国道区間

大清水トンネルがその名を冠している清水峠は、谷川連峰に通された国道291号線上、いわゆる「点線国道」といわれる、徒歩で通行する区間に含まれています。

ちなみに国道上の”点線”区間とは、車両通行不能区間=徒歩通行区間を意味しますが、ここで注意を要するのは、点線区間が要求する「徒歩通行」には、通行人にそれなりの準備と経験を要求するタイプの登山がしばしば含まれるという点です。

徒歩通行がお散歩通行であるとは限らず、時に藪漕ぎを必要とする類の山歩きが求められるわけです。

往々にして、点線国道区間は人の手が入らなくなって久しい状態にあり、しばしば用いられる「酷道」(国道を揶揄)や「険道」(同様に、県道を揶揄)という表現が言い得て妙だという雰囲気を醸しています。

国道291号線の場合、国道上に存在する点線区間の点線区間たる所以は、国道17号線が開通したことによって太平洋側と日本海側を結ぶルートの確保が出来たことから、現在に至るまでかれこれ100年以上延伸計画がとん挫し、放置されたままになっていることにあります。

つまりは諸々の理由から「延伸に適さない」と判断され今に至っているということなのですが、なぜ清水峠をはじめとする谷川連峰一帯が、そこまでの地になっているのでしょうか。理由の一つは、一帯が日本でも有数の豪雪地帯であることに宿ります。

 

大陸からの季節風と『雪国』

ところで、川端康成の小説『雪国』の冒頭にある「国境の長いトンネル」とは、上越線・清水トンネルが謳われたものだといわれています。冬季の雪国へと通じたトンネルを抜けるとそこは一面白銀の世界だった、その様子が端的に表現されたことで感銘を与えたという、有名な一節の一部ですね。

『雪国』でモチーフとされた景観は、そのまま清水峠・谷川連峰が豪雪地帯であることを物語ってもいるのですが、このエリアが豪雪地帯となる背景にはいくつかのステップがあって、最初のステップでは、大陸から日本海を渡って日本へと流れてくる季節風(乾いた寒気)が主役となります。

ここでいう季節風とは、天気予報などでよく言われる「西高東低の冬型の気圧配置」が原因となって、気圧の高い西側(大陸方面)から気圧の低い東側(日本列島方面)に向かって吹いてくる風のことです。

西からの乾いた寒気=季節風は、シベリア気団(気団とは、温度・湿度などで似たような性質を持つ大気の塊)と呼ばれますが、このシベリア気団が日本に向かった風となることが、そもそもの原因となります。

日本に向かう季節風=乾いた寒気であるシベリア気団は、日本海を通過する際に海面から水蒸気を大量に吸い上げ、小さな水の粒等の塊である湿った雲を作りますが、この湿った雲が、日本上陸後ほどなく雪の元となっていくわけです。

 

「湿った雲」が雪を降らせるまで

日本海通過時に海面から水蒸気を大量に吸い上げた雲は、本州の日本海側に上陸後、上信越地方にとっての脊梁(せきりょう)山脈である越後山脈(谷川連峰など)へと流れ、そのままぶつかります。

以降、

 

日本海からの雲は、シベリアからの季節風が山脈にぶつかることによって発生した上昇気流に乗る

上昇気流に乗った雲は、山伝いに上空へと運ばれていく

雲が上へあがれば上がるほど周囲の気温は下がる

気温の低下に伴って、飽和水蒸気量(=空気中に含むことが出来る水蒸気の量)も低下

「飽和水蒸気量を超えた分の水蒸気」が液化する

液化した水蒸気がそのまま雪となる(大量の水蒸気が液化した場合、大雪となる)

 

という過程を通って、大雪へと姿を変えていきます。

余談ですが、日本海を超えたシベリア気団が本州上陸後最初にぶつかるのが、妙高の山々だということです。

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コップの汗と高山の雪

雲の内部で起こっている「水蒸気の液化」は、夏場、コップに入れた冷たい飲み物を常温下で放置しておくとコップが汗をかく現象と、本質的には同じです。

室温であれば水蒸気のまま大気に含まれていた「小さな水の粒」は、コップに入った「冷たい飲み物」の温度に反応することによって目に見える水の粒になりますが、より冷たい空気の中に送り込まれた「雲」の中では、小さな水滴同士が次々にくっつくことによって大粒の水滴となり、その大粒の水滴が雨の元となっていきます。

ただし水自体は0度で固形化するため、水滴となった地点の気温如何では「雨の元」はそのまま「雪の元」へと姿を変えます。冬季の新潟地方の場合であれば、元々地表付近の気温が低いため、恒常的に流れてくる湿った雲は山間部でそのまま大雪の元となり、豪雪地帯が出来ることにつながっていくんですね。

 

群馬へと向かう空っ風

群馬北部の山間部にも、新潟の山間部と同じ理由から大雪が降る地域がありますが、雪を降らせるだけ降らせた「日本海からの湿った雲」は、群馬県内でやがて乾いた空っ風(=下降気流)となります。

越後山脈を越えて群馬へ入り、大雪を降らせた雲が玉切れとなったあと、山間部から平地に向かう形で吹き下りてくる「北からのからっ風」は、フェーン現象と同じ理屈で吹く風です。

季節風が作り出した上昇気流によって気団が高所に上れば上っただけ湿りっ気が減り、かつ「寒い風」となった上昇時とは逆に、山を越えてからの下降時には下れば下っただけ「熱い風」となりながら、既に高所で水蒸気が液化していて、なおかつ「水分」の供給源もないために、乾いた風となって山を下っていきます。

高所から吹いてくる風が地表付近を吹く風に比べて乾いている、かつ下れば下るほど熱くなるという理屈は、夏場も冬場も変わらないわけです。

ただし冬場の場合、温度上昇の影響はさほどではない分、むしろ強い風が吹くことによって体感温度は下がったように感じます。一方で同じ風が夏場に吹けば、風が山間部を下ることによる気温上昇の影響が深刻なものとなる(=熱風が吹いてくる)ため、猛暑の原因となります。

冬場は寒く夏場は熱い事にも理由があるという、中々厳しい自然環境ですよね。

 

難所の難所たる所以

元々標高が高い地区は地表に比べて気温が低いことから雨や雪が降りやすく、さらには風も強い、総じて天気が変わりやすいという特徴を持っています。

標高が高ければ高いほど上空の大気の影響を受けやすくなるということでもありますが、中でも強風、雨、雪、雷の与える影響は深刻なものとなり、雪崩、崖崩れ、土砂崩れ等の発生をもたらす条件にも繋がります。その結果斜面は急峻となり、崖や滝や川が出来、人の意思とは無関係に自然の手が加わり続けていけば、人間の「抵抗」にも限界が出て来ることとなって、その生存活動には適さない領域が増えていくわけです。

高山では、人の生存活動と同様に、その厳しい自然環境が植物の生成に適さない「森林限界」と呼ばれるラインを形成することがありますが、谷川岳の場合は高度1500メートルのラインが森林限界にあたるといわれています。

清水峠を含む谷川岳といえば、遭難者数世界一という不名誉な記録を持つ「魔の山」ともいわれる山岳地帯ですが、その環境の全ては、厳しい自然が作り上げました清水峠越えよりは優しいといわれる三国峠ルートの国境越えにしても、地図を見れば行路の大部分は山だらけで、かつてはそれなりの難所であったであろうことは想像に難くないところですね。

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