【街歩きと横浜史/JR桜木町駅傍】鉄道開通と鉄道創業の地(前)

街歩きと横浜史
この記事は約4分で読めます。

日本初の鉄道開通へ 1

蒸気船、馬車・人力車から鉄道へ

江戸時代を通じて栄えていたという“東海道五十三次”の神奈川宿、ないしは当時の将軍のお膝元である江戸を一方の起点とした場合。

もともとは海路(和船や蒸気船が結ぶ定期航路)の方が優勢だったという開港期の横浜へのアクセスは、

  • 東海道と開港場を結ぶ道が新設された(=横浜道開通)
  • 幕末期(慶応年間)に現在の関内・馬車道エリア一帯がほぼまるごと(全域のおよそ2/3程度)灰燼に帰した
  • 前記“豚屋火事”からの復興時、開港地の区画が一新された

これらの条件が相俟った結果、1860年代(幕末の最末期)を境に”陸路優勢”へ転じます。

「ここでいきなり全てが変わった」のではなく、「この時期に根本的な変化の機運が生まれた」形ですね。

以下に要旨、関連年表をまとめますが、横浜道の開通が1860年(安政7年=万延元年)豚屋火事が1866年(慶応2年)鉄道開通が1872年(=明治5年)です。

港町・横浜の変化

単純に、火災復興時の港町内部の変化を見た場合。

例えば日本側・欧米側双方の希望によって作られたという港崎みよざき遊郭跡地には彼我ひが公園現在の横浜公園のルーツにあたる公園です)が、開港場には延焼防止対策として”日本の近代街路の発祥”である日本大通りがそれぞれ生み出されることになったほか、横浜港の黎明期に馬車の発着場となったことにその由緒があるという現在の馬車道商店街も、この火災からの復興時に”後の馬車道商店街”にあたる道が新たに作られたことが全てのはじまりとなっています(※)。

ということで、仮に豚屋火事が無かったとすると、日本大通りエリアに日本大通りがなく、横浜公園もない、もちろん横浜スタジアム(の原型であるクリケット場を有す、彼我公園)もない、さらに“現在の馬車道商店街にあたる何か”についても、今とは違う場所に、別の名前で存在していた可能性が生じるところとなります。

つまりは開港されたばかりの新造・急造の港町が、大火からの復興を契機として、現在よく知られている港町・横浜へと大きく近づくことになったのだということで、交通手段の変容についてもまた、既に開通していた”横浜道”を軸に、”街の変化”と歩みを共にすることになりました。

参考

関連年表

明治5年、横浜・新橋間にて日本で初めて鉄道の営業運転が開始された後、明治23年には東海道本線が神戸まで全通し、大正3年には、明治以降新たに皇居となった”旧・江戸城”傍に東京駅が開業しました。

他、文明開化華やかなりし明治・大正期の国内各地でも鉄道開通が盛んとなり、交通システム自体も、旧来の制度から新制度への”アップデート”が進みます。

1859(安政6)年 横浜開港(市街地建設開始)
1860(万延元)年 東海道と開港場付近をつなぐ陸路である”横浜道“開通
1866(慶応2)年 豚屋火事発生(以降、開港地整備と火災からの復興が同時進行)
1868(慶応4)年 江戸永代橋・横浜間に蒸気船航路開設
以降、長崎、函館、神戸等の港町間、さらには上海との間を結ぶ航路開設
これより先、蒸気船による旅客・物資輸送が激戦化
1869(明治2)年 横浜・神奈川宿間“馬車の道”が新設され、馬車営業業者が急増
築地居留地・横浜間を結ぶ(東海道を利用した)乗合馬車の営業開始
横浜が馬車交通の”ターミナル”化。小田原、八王子方面等への起点となる
新政府が、R.H.ブラントンの鉄道敷設に関する意見書受け入れ
同、ポートマン・プラン(後述)破棄
資金面の問題などから、“鉄道敷設”が一旦暗礁に乗り上げる
1870(明治3)年 人力車が発明され、実用化
馬車同様、人力車でも(東海道を利用する形で)京浜間が結ばれる
以降、旧来の駕籠かごと入れ替わる形で、全国各地での人力車の利用が急増
京浜間で鉄道敷設工事開始
日本大通り竣工
1872(明治5)年 横浜-新橋間に日本初の鉄道開通
東海道で宿駅制度と助郷制度が廃止

同、新たに各宿場町に陸運会社が設立される
馬車・鉄道による郵便輸送開始
1884(明治17)年 中山道鉄道・上野駅-高崎駅間開通を筆頭に、以降北関東・甲信越・東海エリアでの鉄道敷設が活発化
1885(明治18)年 時の日本社会が、以降数年に渡る企業勃興期(殖産興業政策が奏功したことによる産業革命達成で可能となった、会社設立ブーム)を迎える。鉄道業は”企業勃興”の中核に位置付けられ、特に89年に至るまでの期間、全国各地で私設鉄道の新規敷設が相次ぐ。
1889(明治23)年 新橋駅・神戸駅間で東海道本線が全通
1914(大正3)年 1908(明治41)年に着工した”中央停車場”が、帝都の玄関・東京駅として開業

参考

アクセス(鉄道創業の地)

タイトルとURLをコピーしました