神戸港の開港前史

開港五港のうち、もっとも古くから港（湊）としての発展がみられた（かつ、そのことが多く記録に残されている）のは、神戸港（神戸市公式サイト “神戸港“）の隣に位置している、兵庫港です。

神戸港＝兵庫港のルーツは、平安時代末期の平清盛の全盛期、新たに都とされた福原傍に位置する”大輪田泊おおわだのとまり“に白羽の矢がたったこと、さらにこの港が後に兵庫津ひょうごのつと呼ばれる大陸文化の玄関口・国内海運の拠点となる形で発展したことにあります。

大輪田泊のルーツは奈良時代に行基が築いた船着き場（当時明石海峡沿いに作られた、”摂播五泊せっぱんごはく“と呼ばれた5つの港のうちの一つが大輪田泊でした）にあるとされますが、この港が平清盛の時代に博多と並ぶ日宋貿易の拠点とされ、後に繋がりました。

“平家に非ずんば人に非ず”と言われた平家の全盛期は、一つにはこの港（大輪田泊）から上がって来る莫大な収益によって支えられることとなりますが、武家政権時代（室町・江戸時代）には勘合貿易や北前船の拠点ともなっています。

“そもそも”を辿るのであれば、”港町兵庫・神戸”の必然性は、時の都であった福原や京、さらには一大商都である大坂に近かった”という地政学上の恩恵を被った形で生じたものですね。

摂播五泊のうちの一つ、大輪田泊をルーツに持つ兵庫津隣にて神戸港（港町・神戸）が開かれるのは、それからさらに先に進むこと約1000年、開港期の19世紀の話しです。

武家政権の時代以来栄えた近畿エリアの港としては兵庫津の他大坂の堺が挙げられますが、後に堺ではなく兵庫（神戸）が開港地に指定された理由は、堺がより京の都に近く、かつ側近に多くの皇陵が存在していたエリアだったことに、日本側が難色を示したためであるとされます。

参考：神戸市公式サイト “兵庫開港“ほか

港湾法（港湾施設管理上の規定）上、兵庫県の海岸部の港は現在全て神戸港とされていますが、港湾法の規定でエリア名に”兵庫”が入るのが旧兵庫港（兵庫津）エリア、”新港”やカタカナ名詞（ポートアイランド、六甲アイランド）が入るのが、明治以降新規に開かれることとなった神戸港エリアです。

このエリアで元々開港地として指定されたのは、神戸港ではなく兵庫港（兵庫津）の方でした。

兵庫港（兵庫津）が開港地として指定されたものの、１．兵庫津には近代的な港湾設備が整っていなかった、２．国内の拠点からは少しでも遠い所へという幕府の意向、主には以上の二点から、外国人居留地や新規の波止場が兵庫津の北側に作られたことから、やがて”港町・神戸”が現在のエリアに推移し、広く認知されることとなります。

余談として、よく神戸＝”西の横浜”、あるいは横浜＝”東の神戸”などとその類似性が指摘されることがありますが、例えば神戸港にとっての兵庫津との関係は、横浜港にとっては神奈川宿との関係に位置付けられます。

参考：近代横浜の始まり -横浜開港-

歴史的には兵庫（大輪田泊・兵庫津）・神奈川（神奈川宿・神奈川湊）が先行し、それぞれは後に新興の港町として栄えることになる政令市（神戸町→神戸市、横浜村→横浜市）を含む県名となった（兵庫県神戸市、神奈川県横浜市の成立）というあたりは、その際たる部分ですね。

参考：兵庫県立兵庫津ミュージアム “当館について“、神戸市公式サイト “神戸港港湾計画図“、海上保安庁第五管区海上保安本部 “兵庫県（瀬戸内海）の港湾“、神戸市公式note “神戸と横浜の比較“、神戸税関公式サイト “神戸港の移り変わり“、兵庫津北前船 “兵庫津の歴史“他