この記事を読むのに必要な時間は約 4 分31秒です。
横浜税関・クイーンの広場(横浜税関資料展示室。旧神奈川運上所、象の鼻パーク傍)
横浜三塔と横浜税関
“横浜三塔“へ
about 横浜税関
神奈川運上所から横浜税関へ
開港期の横浜で外交事務と関税業務を請け負っていた神奈川運上所は、現在の横浜税関(公式サイト)の前身にあたる機関で、横浜開港と同時に現在の神奈川県庁の敷地内に設置されました。
慶応4年(1868年=明治元年)、神奈川運上所は明治政府に接収され、一旦県の機関となった後、明治4年(1871年)には管轄が大蔵省(現財務省)に定められ、翌明治5年(1872年)には神奈川運上所の名称が横浜税関へと改められます。
現在、日本国内の税関は9つの区域に分けられていますが、横浜税関はそのうちの一つの区域を管轄していて、管轄下には神奈川の他千葉・茨城・栃木・福島・宮城の各県が含まれています(横浜税関公式サイト “横浜税関官署所在地一覧表“)。
庁舎の移転
横浜税関の初代庁舎は、神奈川運上所の名称が”横浜税関”と改められた年の翌年である明治6年(1873年)に、現在の神奈川県庁の敷地内に建てられました。
“初代・横浜税関”の建物と敷地はその10年後(明治16年=1883年)に神奈川県庁へ売却され、さらにその2年後(明治18年=1885年)には大さん橋の手前、“象の鼻”エリアの開港波止場と呼ばれている一帯に竣工しますが(参考:明治20年代の開港場付近の様子)、残念ながら二代目庁舎は関東大震災(大正12年=1923年発生)で消失してしまいます。
横浜税関が現在の位置に移ったのは関東大震災後の昭和9年(1934年)、震災からの復興の一環で、後に”クイーンの塔”と呼ばれることになる三代目庁舎が竣工しました。
横浜税関の表玄関
表玄関は海側に向けて作られていますが、
実務に供すると思われる玄関は海岸通り沿いに作られていて、
玄関すぐのところには”横浜税関”の由緒書きと、
市バス109系統のバス停、
さらには横浜税関100周年記念碑が置かれています。
横浜税関資料展示室
税関の仕事 -通関業務と各種取り締まり-
1.不正薬物や知的財産侵害物品等、密輸品や不正輸出の取り締まり、2.適正かつ公平な関税等の徴取、3.貿易円滑化の推進、以上の三点が税関の主要な使命にあたるとされています(横浜税関公式パンフレットより)。
“使命”の2番目に挙げられた輸出入の通関(税関への輸出入の申告と、税関からの許可手続きにまつわる審査・検査、さらには関税徴取、以上の業務全般が通関業務と呼ばれます)が実務の柱となった時、付随的に出てくる仕事が通関業務=貿易の円滑化を促進するための仕事となるのですが、通関業務を遂行し、さらにその円滑化を図った時に現実問題として直面する問題が、”使命”の第一にあげられている各種取り締まりの必要性で、ここに多大な労力を割かれてしまっているという現実があるようです。
いわゆる水際取り締まり(税関公式サイト “水際取締“)には税関のみが単独で当たっているのではなく、首相官邸や内閣府を筆頭に、厚生労働省、警察庁、麻薬取締官等々、関係各所が総力を挙げて取り組んでいるようです。
ということで、横浜税関の資料展示室(公式サイト)でも、横浜税関・貿易の歴史の他、”取り締まり”関係の展示にも力が入れられています。
資料展示室内
横浜税関の歴史
資料展示室の前、道沿いでは、おしゃれなオープンカフェのテラス席付近にでも置かれていそうなブラックボードで”税関資料展示室”の入館情報が告知されていて、
入り口入ってすぐのところにあるのが”クイーンの塔”としての横浜税関の紹介、
2022年に創設150周年を迎えるという税関の記念リーフレット(無料)が配布されているコーナーがあったり、
神奈川運上所時代の門構えを思わせるような一画では、開港期の横浜の様子が展示されたコーナーが設けられ、
さらに奥へ進むと、横浜港と日本の貿易の成長の跡が、わかりやすくまとめられたコーナーへと続きます。
“かつての跡”といった意味では、歴代の横浜税関庁舎の屋上や塔頂部に付けられていた装飾も、
展示コーナーの中央部に展示されています。
例えば象の鼻エリアや赤レンガパークなどで”クイーンの塔”の外観を見た後、「中に入れるのかな」といった気持ちでちょっと立ち寄る分には、ちょうどいい施設でもありそうです。
“取り締まりの実態”コーナー
このどちらかというと華やかな趣のある雰囲気が一転しておどろおどろしいものになるのは、
違法な輸出入品が摘発された様子が再現されたコーナーに入ってからです。
元々、開港当初から麻薬の輸入は禁じられていたようですが(神奈川運上所コーナーの展示品です)、
現在では、例えば偽造された壁の裏に覚せい剤が隠されて運ばれたケースが摘発された他、石材の中に覚せい剤が埋め込まれた上で運ばれることもあったようで、
それらのケースでは、最新の技術が用いられた摘発業務によって押収され、事なきを得たようです。
取り締まり対象は麻薬のみにあらず、偽ブランドや、著作権を無視したいわゆる海賊版商品、
さらには絶滅の恐れのある野生動植物とその関連商品等々にも及んでいますが、
偽ブランドや海賊版商品については、
有名キャラクターや有名ブランドの実際の商品と、本物に精巧に似せて作られた”ニセモノ”が並列され、「どちらがほんものかわかりますか?」と見せてくれるコーナーも設置されています。
靴や衣類であれば履き心地や着心地などから察しがつく場合もあるかもしれませんが、パッと見ではほぼ見分けがつかず、見分けるためのポイントも秘されたままで展示されています。
総じて、”歴史の中にある横浜税関”を見せてくれるというよりは、”横浜に作られた税関の歴史と現実”を見せてくれるという趣が強く、歴史共々通関業務の現実に興味がある場合などにオススメです。