この記事を読むのに必要な時間は約 3 分51秒です。
【街歩きと横浜史】日刊新聞発祥の地(馬車道駅、横浜市役所傍)
日刊新聞発祥の碑
“日刊新聞発祥”と”日本国新聞発祥”
馬車道駅の1b(アイランドタワー方面)出口傍に、”日刊新聞発祥の地”を記念する碑が置かれています。
日刊新聞発祥碑は、日本の国内におよそ新聞と言われるメディアが登場した後、そのメディアが初めて日刊となったことを記念したものです。
日本国内では1871年(明治3年)に、現在の毎日新聞とは別の系列の新聞社である横浜毎日新聞から、初の日刊新聞が発行されました。
横浜中華街(公式サイト)の関帝廟通りには”日本国新聞発祥の地“碑が置かれていますが、こちらは日本国内で”新聞”と呼ばれるメディア(1864年、海外新聞)が初めて発行されたことを記念した碑です。
横浜毎日新聞と、新聞各紙
横浜毎日新聞
“横浜毎日新聞”としてスタートしますが、東京に移転後も”東京横浜毎日新聞”(1879年~86年)、”毎日新聞”(1886年~1906年)、”東京毎日新聞”(1906年~1940年)と、常に社名に”毎日”がついて回っていた時期を長く持ちます。
そのため紛らわしいといえば紛らわしいのですが、”日本初の日刊新聞”を発行した横浜毎日新聞は現在の毎日新聞とは別の会社です。
上記した”〇〇毎日新聞”の時期を経て、1940年(昭和15年)に同じく”硬派”(新聞の”硬派”について、後述)を売りとする帝都日日新聞社に買収された後、1968年(昭和43年)の”帝都”廃刊を契機として、翌1969年(昭和44年)より保守系の”やまと新聞社”(公式サイト)となって現在に至ります。
毎日新聞社
“横浜毎日”に名前が良く似た現在の毎日新聞は、元々は”東京日日(にちにち)新聞”という、東京で初めて発行された日刊新聞をルーツに持つ、硬派で鳴らした政論新聞として始まりました。
“東京日日”自体は、関西メディアである”大阪毎日新聞”に買収される形で現在の毎日新聞へと繋がっていくのですが、伝統的に”御用新聞”(政府の保護下で、政府のプロモーション的な報道を進めていく新聞)の色が濃かった”東京日日”は、諸々の不祥事や問題を抱えて存続する現在の毎日新聞とは異なり、業界をリードする新聞社だったとされています。
“東京日日”の流れを汲む毎日新聞社は、戦後間もない時期には単独で、後に共同でプロ野球チーム(現在の千葉ロッテマリーンズの前身である1949年の毎日オリオンズ、60年代の大毎オリオンズ)の運営にもかかわっているので、”その昔”を知る人にとっての現状は、思い半ばにすぐものがあるといったところでしょうか。
ちなみに毎日新聞社がオーナーを務めていた当時のプロ野球のオーナー企業は、読売、中部日本新聞(中日新聞)社等のメディア(後に一時期サンケイも加わります)、松竹、大映などの映画会社、国鉄、東急、近鉄、南海、阪急等の鉄道会社(後に阪神も加わります)中心でしたということで、押しも押されもしない企業のラインナップの一角を占めたのが、かつての東京日日新聞であり、かつての毎日新聞でした。
読売新聞社・報知新聞社・朝日新聞社
現在はどちらかというと”知識人向け総合新聞”のイメージが強い読売新聞は、その昔は代表的な大衆紙で、戦後長らく”クオリティーペーパー”(高級紙)を自称してきた朝日新聞共々、小新聞(こしんぶん)としてスタートしました。
やがて”東朝(東京朝日)・東日(東京日日)”の二強として言論をリードすることになった戦前の東京朝日新聞、後の毎日新聞である東京日日新聞とは路線を画し、”読売”は長らく大衆紙としての人気・地歩を固めていきます。
現在は読売新聞系列となっている報知新聞社は、創刊にあたって前島密(日本郵便公式サイト 前島密年譜)が企画に関わり、創刊時の新聞名が”郵便報知新聞(報知新聞社小史)”だったという、元々は硬派な記事で売っていた新聞社でした。
1942年(昭和17年)に読売新聞と合併し、後に現在のスポーツ報知を発行する新聞社となったことを契機として”軟派”へ移行します。
大新聞と小新聞、硬派と軟派
“大新聞”とは紙面の大きさが大きく、政論等硬派な内容を扱っていた新聞の事を言い、反対に“小新聞”とは大新聞に比べて小さい紙面で発行されていた、現在のキュレーションメディアや雑誌のような内容を持った新聞のことを言います。
いずれも日本国内で新聞が発行されるようになってから間もない時期の呼称で、前者は高級紙の源流、後者は大衆紙の源流と言い換えることも可能ですが、旧士族の不平やその後の自由民権運動を言論で支えた前者の系統にある新聞=大新聞だったことに対し、街の噂話やゴシップ、連載小説等で人気を獲得していったのが後者の系統にある新聞=小新聞だっただったという、ざっくりした相違があります。
余談として、新聞の紙面では大ニュース(主に1~3面)や政治経済ネタなどを扱った面を“硬面”(かためん)、社会・芸能・スポーツ等を扱った面を“軟面”(なんめん)と言いますが、”硬派の記事”や”軟派の記事”といった場合にも、そのカテゴライズは同様の意味(硬派=大事件や政治経済関連の記事、軟派=社会、芸能、スポーツ記事)を持ちます。